つづりつづられ
小石原淳
つづりつづらレ
「はい、始まりました、クイズ『その英語、どんなカンジ?』。司会のスリーボックス、スリーラインこと
ぴぽん。
「
「目白駅」
「正解! 重ねた三つの箱で“目”、エイトは8でデジタル文字に置き換えると“日”。これにアポストロフィを付けると“白”ということで、二つ並べて、目白になります。ということで正解は目白駅。川藤さんには三ポイント入ります。
では第二問。早押し問題です。外国人から“クロスブレイクスルーボックス”と“ゼット”は対義語ですかと質問された。何のことを言っているのだろうか。……さあ、どうだ。まだかまだか。制限時間が迫るっ」
ぴぽん。
「おっと、ぎりぎりで来た。
「甲と乙、じゃありませんか?」
「正解! どうやって正解に辿り着きました?」
「最初の“クロスブレイクスルーボックス”ってのが、いまいち形にならなかったので、後者の“ゼット”から考えたら、アルファベットのZは“乙”しかないよねと。それで乙の対義語っぽい漢字を連想していったら、“甲”かなって。そう思って考えると、十字がボックスを上から下へ突き破ったような形だし」
「お見事。それでは続いて第三問。記述問題です。外国人から、『ワンライン パイ、スタックトツーボックス アンダーライン』の習わしについて尋ねられた。どのような習わしがあるのか、一つでいいので、教えてください。ただし解答は、質問者の流儀に合わせたものにしてほしい。制限時間は三分、それではスタート!」
・
・
・
「――はい、そこまで。ペンを置いて、フリップをお立てください。おや、やはり時間的に厳しかったか、何も書かれていないか試行錯誤のあとだけの方が結構いますねえ。それじゃあ、
「えっと、凧、です。空に浮かぶ方の」
「うーん、なるほどなるほど。かぜかんむりをかつらに見立てて、その中にある巾を旗と言い表したと。それじゃあそもそもの『ワンライン パイ、スタックトツーボックス アンダーライン』をどう解読したのか」
「元旦でしょう。横線一本にπで“元”、二つの箱を重ねた“日”にアンダーラインを添えると“旦”」
「正解です。あとは凧をどう評価するかに掛かってきます。凧揚げはお正月の風習の一つで間違いではないが、元旦に限った物ではないですので、その辺りがどう響くか。次は……
「はい。それで答が『スタックトツーボックス スタックトマウンテン』で“日出”、つまり日の出。初日の出にしたかったんだけれど、“初”や“の”は難しすぎて」
「ちょっと苦しいかなあ。漢字の“山”の形をマウンテンと認識してくれるかどうか。横倒しにしたEを重ねたとかの方が、“出”の形状は伝わるような気もしますねえ。“の”にしても、数字の6を俯せにしたと表現するとか……。でもなるべくシンプルな英語表現にするのが難題か。何はともあれ、苦心の跡が忍ばれます。
さあ三人目は……
「これはもう、今までこの番組で何度か出て来たのを使おうと思いました。認められている訳だから。ゲートはそのまま門。木偏を表すのが帽子を被った上向き矢印、マスタシュが八の字髭で、その下にアルファベットのAを置くと、松の字に似た形になる。二文字で門松になります」
「なるほど。川藤さんも当然、同じですね。はい、分かりました。安全パイなのは悪くないけれども、ここは新たな創造性を見せて欲しかった気がしないでもない」
「だったら時間をもっとくれなきゃ」
「おお、そうでした。えっと、他に解答されている方はと」
「――今回、予選を勝ち抜いてファイナルステージに進まれたのは、田野倉
当番組をご愛顧なさっている皆様には言うまでもありませんが、ラストの設問と言っても、さほど難しくはありません。どうぞ、気を楽にして挑み、勝ち取ってください。田野倉さん、心の準備はよろしいですか?」
「はい。よろしくお願いします」
「よろしく。では、最後の問題です。ノリとハサミ、そして『コンマプラスボックス』、これら三つから連想される生物を、英語と漢字でフリップに書いてください。制限時間は二分、早ければ早いほど賞品の中身が豪華になります。では始めます」
「――はい、できました」
「早い! 早速拝見しましょう、どうぞ出して。……これは……正解! sparrowと雀。ミスはないと確認されました。おめでとうございます、田野倉さん。さすが」
「いえ。問題を読まれているときから考えていたら、閃いただけです。コンマとプラスとボックスを上から下になるよう順番に並べると、舌という字に似た形になる。ノリにハサミに舌ときたら、日本人なら昔話の『舌切り雀』を連想するのは難しくないです」
「いや、それにしてもお見事でした。所要時間、たったの五秒。これ、記録ですよ。おっと、そろそろおしまいの時間が近づいてきました。尻切れトンボにならないよう、豪華賞品獲得のチャンス、選択の時間です。今回はラストの問題にちなんだ形で用意しました。そこからご覧になって、お持ち帰りになる一つをコールしてください!」
品川品三が腕を振った先では、幕がばさりと落とされ、司会者の言葉の通り、三つの物体が現れた。
手のひらに載る小さな箱と、腰掛けられる程度の中くらいの箱、そして一台の軽トラックに匹敵する大きな箱が。
終わり
つづりつづられ 小石原淳 @koIshiara-Jun
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