人は驚き過ぎると呆然とする

晴れ。

神様の1枚




アンパンマンは

顔が汚れると力を失ってしまう。


人は驚き過ぎると呆然としてしまう。


頭の中が空っぽに・・・野沢雅子さんも仰っていた。





一時期、

集英社の雑誌編集部に

出入りしていたことがあった。


仕事の原稿を

直接持っていくことを理由に

一足早く

気になる漫画の続きを読むためだ。

同じく集英社で仕事をしていた友人と

非常にマメに通っていた。


完成原稿を持参する以外にも

「ネームに集中したい」等と、

理由にもなっていない

言い訳を作って、通っていた。


実際ネームも描いたし

ストーリー展開の相談にものってもらい。

まあ 丸きり嘘でもない。


ある日

ある時、だ。

集英社のとってもエライ人が

こう言った。


「がんばってる君たちに

 いいものを見せてあげるよ。

 手を洗っておいで 」


目の前に出てきたモノに

心臓が止まりそうになった。


うわー!も

おおー!も

何も言葉が出てこなかった。


鳥山明の生原稿を

前にして

頭が真っ白になった。




神様のすべてが

そこに詰まっていた。



原稿がキレイだとか

かっこいいだとか

なにも出てこない。




出てくるのは

ただただ涙。




原稿を汚さないように

気を付けながら

1枚1枚拝んだ。


涙で汚しそうだったので

原稿を掲げて

大事に大事に拝んだ。



集英社のエライ人は

最大級の応援をしてくれた。

エライ人ありがとう。



神様が実際に触って

命を吹き込んだ

1枚1枚には

神の息吹が宿っていた。




神様ありがとう。

おかげで今も

がんばってます。





神様は

遠くから拝むだけで

精一杯。

さすがに声は

掛けられなかったなあ。








・・・


寂しい。


ポッカリ。






寂しい

寂しい

寂しいよう。









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人は驚き過ぎると呆然とする 晴れ。 @Nirvana852

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