叶わない恋の相手は……

猫兎彩愛

叶わない恋の相手

「実は僕、人間じゃないんだ」

 え? 

「どういうこと?」

 不思議そうに彼を見上げると、彼は切なそうに……寂しそうに、私を見つめる。


――


 あーっ! また居る!


 夕方になると、いつも公園のベンチで本を読んでいる彼。思いっきりタイプだったから、初めて見た時から心を奪われていた。学校の帰り道、彼を見るのが密かな楽しみになっていた。何とか話せないかなー。そう思っていると、彼と目が合った。


 彼はにっこりと微笑み、自分の座っている隣をポンポンしている。


 ん? 来い……って事なのかな? ど……ど、どうしよう? いきなり過ぎて心の準備が……っ!


 緊張してその場で動けずにいると、彼がこっちに向かって歩いて来て、微笑みながら話しかけてくる。


「勘違いだったらごめん、最近俺の事見てる?」


 ……っ。バレてる。見てたのバレてるっ!


「あ、え、えと、その、あの……は、はい。ごめんなさい」


 何とか返事をした私を見て、彼が吹き出した。


「……ぷっ。ははっ、挙動不審過ぎ」

「で、ですよね。ごめんなさい」

「ふふ、謝ってばっかりだね。そんなに謝らなくても良いよ?」


 そう言いながら、笑う彼は爽やかで眩しかった。その眩しさに、更に心を奪われてしまう。


「ホントですね。私、謝ってばっかり。ごめんなさ……」

「ほら、また」

「はい……」


 自分の顔がみるみる赤くなってくるのも分かる。そんな私を見て、彼はまた、優しく笑う。


「可愛いな」

「えっ!? な、何がですか?」

「君が」

「そ、そんな」

「俺もずっと気になっていたんだ。初めて見た時から、今日もまた、ここ通るのかな? とか、楽しみになってた」


 彼も私の事を!?


「ほ、本当ですか?」

「うん、だから今日、こうやって話せて凄く嬉しいよ」


 こんなに嬉しいことがあるのだろうか? 彼も私の事を想っていたなんて。


「私もです! すっごく嬉しいですよ」


 それから、毎日欠かさず会いに行っていた。彼もまた、1日も欠かさず会いに来てくれていた。


 毎日会えて嬉しいな。だけど、ずっとこの公園でしか会えてない。今日こそ、誘わなきゃ。今日は違う所に行きたいって。


 そう、彼との待ち合わせはいつも公園。しかも、彼はいつもあのベンチに座っている。


「あ! 今日も会えて嬉しいよ。また、いっぱい話そうな!」


 満面の笑顔で私に手を振りながら、話しかけてくる。


「今日はね、したいことあるんだ」

「急にどうしたの?」

「急じゃないよ? 今日は他の所行きたいの。手を繋いで、ショッピングとかしてみたい」


 彼は少し驚いた顔をしながら、答える。


「そか。色々行きたいよね?」

「うん! だから、ほらっ! 行こう?」


 早くー! って、彼を手招くが、彼は一向に動かない。


「どうしたの?」

「実は僕、人間じゃないんだ」


 え? 


「どういうこと?」


 何、言ってるの?


 不思議そうに彼を見上げると、彼は切なそうに……寂しそうに、私を見つめる。


「ごめんな。俺、ここから動けない。もう、この世に居ないんだ。俺、本当はずっと君と一緒に居たい……けれど、それは叶わないんだ」


 彼の突然の告白に私はそこからしばらく動けないでいた…… 



 








 

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叶わない恋の相手は…… 猫兎彩愛 @misausa03

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