パンドラ

執愛、讐愛、醜愛

目の前にあるのはパンドラの箱

一度開いてしまったらもう元には戻れない

一秒前の私には戻れない

何も知らないままでもいいのに

全て隠されたままでもいいのに

どうしてこんなに箱は私を惹きつけるの？

ねぇ、あなたを信じたい神様とあなたを信じきれない悪魔がワルツを踊っているのよ

ねぇ、どうかこの聖戦は神様が勝ちますように

どうせ時間は巻き戻らないのだから

どうせ過去に戻れないのだから

一秒前の私には戻れなくてもいい

何も知らなければいいのに

全て隠されたままでいればいいのに

どうしてこんな箱を私の前に置き去りにしたの？

ほら、あなたを憎む悪魔とあなたを憎みきれない神様がワルツを踊っているのよ

ほら、どうかこの聖戦は悪魔が勝ちますように

あなたの笑顔は変わらないのに

私が全てを知ってしまっただけで

世界がこんなに変わってしまうのね

あなたの言葉は変わらないのに

私が全てを見てしまっただけで

世界はこんなに穢れてしまうのね

これは、いつかどこかの誰かに聞いた昔話

アダムとイブはなぜ林檎を囓ったのかしら

知恵の実なんて惨たらしいだけ

それは、いつかどこかの誰かに聞いた思い出

一度知ってしまえば忘れたくても消えてくれない

パンドラの箱なんて残酷なだけ

もう、あなたを愛した神様とあなたを許しきれない悪魔がワルツを踊っているのよ

もう、どうやらこの聖戦は和解をしたようね

あなたを愛した神様があなたを精一杯甘やかして愛して慰めて癒やしてあげる

その後

あなたを殺したい悪魔があなたを裏切って痛めつけて刻みつけて壊してあげる

その後

私はヒトリ部屋の中でワルツを踊っているのよ

手足を鮮紅（あか）く染め上げて

焼き上がったアップルパイを頬張るの

そのまま

私はトナリ部屋の奥でアナタを奏でているのね

首根まで紅潮（あか）く張り上げて

蕩（とろ）けきったシブーストを吐き出すの

それから

それから

パンドラの箱に残ったものを未来に投げつけて

今日（かこ）のことを何度も繰り返して

鳴り止まないリフレインを

終わらせないようにヘビロテするのよ

あぁ、私に残った神様と私に残された悪魔がワルツを踊っているのよ

あぁ、どうやらこの聖戦は私が飼ったようね