【KAC箱】姉弟と素敵な贈り物

葦空 翼

姉弟と素敵な贈り物

「父様が今度、知人のお子さんに贈り物をするらしいの。大きなお人形と積み木の詰め合わせで迷ってるらしいのだけど、貴方はどっちがいいと思う?」


 ある日の昼下がり、姉が朗らかな声で話しかけてくる。たまにはお茶でも、と誘われたから何かと思えば、そういうことか。俺はうーん、と頬杖をついた後、自分なりの意見を告げた。


「俺がその子だったら、断然積み木ですね。箱を開けたら贈り物がたくさん! って素敵じゃないですか」

「そう? 私は大きなお人形がいいと思ったの。箱を開けたら真っ先に、お人形と目が合うのよ。サプライズとして最高だと思わない?」

「そりゃあ驚きはありますけど」

 

 市民が憩う、穏やかな空気に満ちた喫茶店。甘い菓子の匂いに満たされた店内で、二人の意見が割れた。結局この案は二つとも捨てがたい。だからこそ父は悩んでいるのだろう。


 さて困ったぞ。

 どう結論を決めるべきか。


 俺は眉間に皺を寄せて、なんとか質問を捻り出した。少しでも答えを出すのに近づくように。

 

「参考までに、贈り物の箱はどのくらいのサイズにする予定なんですか? せっかくだから、運ぶ手間も考えるべきかと」

「んん…………大きい物はお人形が入るくらいだから、大人の腰の高さくらいは欲しいかしら」

「てことはやはり大掛かりになりますね」

 

「あっでも、そこまでやたらに大きな物じゃないのよ。特別製でね、軽い物らしいから」

「ああ、人形は軽いんですね。じゃあ…………」


 俺はにこりと笑った。名案を思いついたのだ。


「大人の腰より小さな箱を用意して、あえて人形をぎゅっと詰め込んだらどうでしょう。そのお子さん、人形が入ってるなんて思わなくて開けたら驚くのでは」

「ああ、小さい箱にみちみちに詰めるのね。素敵。きっと驚いてくれるわ」


 姉はぱぁっと花が咲くような笑みを浮かべ、同調してくれた。よし、決まりだ。二人で席を立つ。


「じゃあ、〝贈り物を作りに行きましょうか〟」。




 

 二人の職業は、暗殺者だ。


 

 

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【KAC箱】姉弟と素敵な贈り物 葦空 翼 @isora1021

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