箱・おぼろの龍 その2

京極 道真  

第1話 箱から出た龍

翌朝机の桜の花びらを見て、柄にもなく龍のお礼に雅を感じた僕。

「やっぱり春はいいなー。塾は午後。学校は休み。空気がなんといっても

“暖かい”気持ちがいい。」

「だよなー。」

えっ?「誰だ。」部屋は一人だ。見渡すほど広くない僕の部屋。まさか窓の外?

誰もいない。「ここだ。リク、お前の中だ。」

よく聞くと生意気な俺様キャラの声。まさか

「昨日の、餅の中に入り込んだ、いやしい龍か?」

「リク、俺様は、いやしくないぞ。高貴な龍だ。

ヤマト様だ。」

「そうか。龍殿。名前はヤマトか。

それでなんで僕の中にいるんだ。箱の餅の封印はとけたんだろう。さっさと自由に。

出てってください。

午後から塾。午前中はゲームがしたいんだ。」

ヤマトが僕の真ん中あたりからヌーっと顔だけ出した。

「今しばらく、お前、リクのカラダに居座ることにした。」「図々しいぞ。」

「リク、餅の箱の次はお前のカラダが箱だ。お前の箱も悪くない。一日だけだ。俺様に付き合え。」

まあ、春休み初日だし、いいか。僕は意外とお気楽なタイプだ。柔軟だ。人間も龍も宇宙人でも来るもの拒まず。去る者追わず。特にこだわりはない。

「で、ゲームするんだけどヤマトお前もするか?」

「やるやる。」ヤマトの鋭い爪の指は悔しいほど滑らかに俊敏に動いた。まるでプロのゲーマーだ。

「くそー負けた。」僕は床に転がる。ヤマトが「リク、この四角い箱から出ないか。空の青と太陽の赤を見たい。」

「そうだな。11時。中途半端な時間だが。

よし行くか。」

玄関ドアを開け、家の箱から僕らは外に出た。「気持ちいいな。ヤマト。」

「そうだろう。外はいいだろう、リク。」

「まあな。」

「リク、目を閉じろ。」大きな風が吹く。

足元に町の家が、たくさんの箱が見えた。

「リク、空はどうだ。いい眺めだろう。」

「いいな。空の青と太陽の赤。眩しい。」

「それに箱の外には、無限の時空が存在する。餅の箱に封印された俺様のような龍もいる。」

無限の時空か。

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