6話 初めての魔法!
「なぁ……なんだこれ!!すげぇ!!!──」
俺は地面ポンっと煙と同時に現れた地味な扉を開け、覗いてみたら、真ん中には四角い大きいテーブルが置いてあったり、部屋の隅には見ただけで分かる高級感あるふかふかなベッドがあり、すぐそばの机にはソリアが使っていたであろう手芸道具や糸なんかが籠の中にお洒落に入れててあった。
他にもたくさんの本が積み上げられたり、見た事が無い植物、ソファーやキッチンに暖炉などが、オレンジの温かい色のランタンに照らされており、多少散らかってはいたがその場にいるだけで心が温かい気持ちになる雰囲気か出ていたのだ。
それに女の子特有のいい匂いだ~脳内保存。
「兄さん兄さん!この部屋の雰囲気なんだかジ〇リのハ〇ルにものすごく似ているよ!凄いね!」
「お、良い例えだな確かに似ている。日本にはこういうの足りなかったよな!」
普段サグメは”物静かな清楚系”なのだがこの世界に来てから色々とキャラがブレブレだ…まあ、それぐらいこいつも異世界にウキウキって事だろう。
俺達2人はワクワクしながら不思議そうに見ているとソリアが嬉しそうに話しかけてきた。
「ふふ、何もない部屋なのに喜んで貰えてこちらまで何だか嬉しくなります~。今お茶を用意しますのでこちらにどうぞ座っててください!」
ソリアは手で真ん中にあるテーブルを指し俺とサグメは椅子に座るが、またすぐに立ち上がりソリアの元に向かった。
流石にこの金髪の美少女も俺達が一瞬座ってまた立ち上がったため困惑した顔で今度は見てきた。
「お二人とも座ったと思ったらこちらに来て…どうか致しましたか?」
「あ~気に障るならすまん、どうやってお茶を作るのか気になってな」
隣でサグメが「うんうん」と頷いているが俺は違ったのだ。もちろん作り方は気になるが、一番は……
この子ヤベェ~わ。間近で見ると反則級に顔のパーツが整っておりマジの美少女なのだ、これは…媚び売りまくらないとな~。
「………にぃさん」
「痛っ!」
俺はソリアの顔をまじまじと見ていたら、ジト目をしたサグメにつねられてしまった。しかしそんなやり取りをしていた俺達を見てソリアが微笑んでいた。
そしてテンポよく作ってる作業を進めてると……
「この世界のお茶ってそんな風に1から作っていくんだね。」
サグメは不思議そうに見ていた、確かにこいつも料理とか好きだった。朝は毎日朝食と弁当を作って貰ってたしな、今思うと異世界でも家のごはんを作ってもらえるって最高だ。
……なんか、サグメの手料理を食べたくなってきたな。あとでサグメに日頃のお礼を言っとこう、親しき中にも礼儀ありって奴だ。
俺はサグメを見ながらそんな事を考えていたら、ソリアがポットを温める台みたいな物を取り出し、そこに”手から炎”を出して台の上の火を乗せたのだ!
俺は薄々感じていた。この世界に来たらまずは試してみたい事があると!忘れていたが今完全に思い出した!
「それだああああああああああああああ!!!」
「「兄さん!?レンさん!?」」
しばらくして俺はソリアのお茶を飲みながら、2人に叫んでしまったことを謝罪していた。
「さっきは急に大声出して悪い。それにしてもお茶美味しいな!」
「急に叫ぶからビックリした。でもそうだね心が温かくなる美味しさしてる。」
「よかった~お二人のお口に合って嬉しいです!」
サグメも満足そうにお茶を味わっており、ソリアも嬉しそうな顔で手を合わせいた。
…こんな子を嫁に出来たら間違いなく人生勝ち組だろう…
「それで…レンさんはどうしてさっきは驚いていたんですか?」
ソリアがさっきの事を聞いてきてサグメも俺の目を黙って見つめてきた。
俺は真面目な目でソリアを見つめると彼女は照れたのか少し頬を赤くした。
一瞬告白しようかな?と意地悪を考えたが、話が進まなくなりそうなのでやめにして、さっきの「炎」の事を聞いた。
「さっき手から火を出していたよな?あれって手品じゃないよな?」
「手品?...と言うものは初めて聞きました…。」
「じゃあやっぱり魔法?」
「はいそうですよ~」
「………」
ソリアは魔法が当たり前のように落ち着いた表情をしていたが、俺はワクワクし始めサグメにしか聞こえないひそひそ声で……
「なあ、俺達もう魔法使えるんじゃないのか?」
「うん、あの神から本当に貰えてたら使えると思うけど…どうやって使うんだろう?」
「うーーん……よし!」
そういえばソリアがこの家を出す時にブツブツ小さい声で呪文を唱えていたのを思い出して俺は意を決して立ち上がり、日本のアニメや漫画などの
詠唱方法を参考に額に手を当てて……
「フフフフフ………今……時ハ来タ!!我ノ内二秘メル力ヨ……今ここにいでよ!!!」
まあまあ大きい声でダサすぎる中二っぽいセリフを言って手を前に勢いよく出したがなにも起きない……普通こういう時何か出てもいいだろう!
「………クスッ」
「アハハハ……凄い…ですね!」
「……こういう魔法の出し方もあるのかなぁ~って質問したかったんだよな~。こらサグメ笑うな!」
俺は”しらこく”いいさっきに痛い発言を無かった事にしようとしたが、サグメに鼻笑いされてしまったし、何よりもソリアに見られてしまったのが何よりも恥ずかしい。俺はいったん座り、仕切り直しをするように、咳ばらいをして話を進める。
「おほん、なあソリア俺達にどうやって魔法を使えるか教えてくれないか?」
「うんうん」
俺が頼み込むとサグメも横で『うんうん』と頷いている。
さっき手から炎を出していたのは本当にかっこよかった!早く俺も使ってみたい!
「ふふっ、いいですよ。じゃあまずはこちでこの魔術本を読みましょうか。」
そういうとソリアは立ち上がり本棚へと移動したので俺達も着いて行く。
「ちなみになんですけど、お二人はどうして空から落ちてきたのですか?」
「うぇ?あーそうだな色々あってだなー」
本棚へと移動した瞬間に聞かれた為少し動揺してしまう。そういえばどう言い訳するか全く考えてなかったからどうしたものか...こういう時はサグメに…
「…兄さん」
俺はサグメに肩を組もうかと思ったが向こうからしてきたため手間が省けた。
よしこれで相談が出来る。申し訳ないがソリアには待ってもらおう。
「すまんソリア少し待っててくれ。」
「わ、かりました…」
ソリアは苦笑いをしながらも待ってくれるらしい。
なんていい子なんだ!だがすいません!今はうそをつかないといけないんだ!
「よし、サグメどうする?」
「ふふーん兄さん、私は兄さんの”雑魚雑魚”脳みそとは違ってもう言い訳を思いついたよ」
こいつほんとにキャラが急に変わりやがる!次はメスガキか?
「お前急に!いいぜ。後で物陰に連れ込んで分からせてやるから覚悟しろよな!」
「もう兄さん、話が進まないから今ノリについてくるのはやめて」
「お前が始めた物語だろ!!!」
たまにこいつは超めんどい。本来ならここで妹にお仕置きをしてやる所だが、ソリアを待たせてるので…
俺は呆れながら話を進めた。
「で、結局お前の考えはなんだ?」
「私たちは魔族の救済の為に来たって言うの、兄さん」
「でも、俺達本来は魔王様を助ける為に来たんだろう?」
「兄さん、魔王もそうだけど、目の前にいるソリアは私と兄さん以外の人は全員嫌ってるんだよ?こんなにいい子なのに。
魔王様だけじゃなくて、目の前にいる優しい子は私達だけでも味方になってあげようよ!だから兄さん、正直に言おうよ」
「サグメ…」
サグメはさっきと違い、真面目に答えた。普段ならこういう時でもふざけた事を言うのに…全く、調子が狂うぜ。
俺は無言でサグメの頭を撫でた後にこの事を言おうとしたがサグメが先に言いだした。
「ねぇ、ソリア。私たちは魔族、ソリアと仲良くなる為にここにやって来たの。さっき子供に石を投げられたでしょう、私たちが協力してソリアがあんな目に合わないような世界にして見せる。」
「無理ですよ…私はもう何年もずっと言われてるんです。いくらサグ…」
ソリアが否定的な事を言い続けようとした瞬間、サグメがソリアに抱きつきやがった!
「確かにそうだね。世界は広いから少し言い過ぎた。でも私が…”姉さん”だけはずっと味方だからね」
「お前ら……」
恐らく凄くいいシーンだと思うのだが…『こいつもしかして自分の事を姉さんって呼ばれたいだけじゃ…』出合って一言目がお兄ちゃんだの、その角生やす為に脳みそ捨てただのサグメの罵詈雑言を…
待て…そういえばどうしてソリアはお兄ちゃんって...
「ありがとう!お姉さん!私のそばにずっと居てください!」
「ちょっと失礼、いったんレズプレイはその辺にしてだな」
俺は長くなりそうなので話を進めようとするが…
「もちろんレンさんも私から…その…離れないでください」
顔を赤くしてもじもじしながらそんな事言われたら男は必ずこうするだろう…
「ソリア、結婚しよう。」
俺は跪いてソリアの手を握った。
「─────!!」
今日いきなりあった人に普通はこんな事されたら恐怖でしかないだろうが、こいつ………………喜んでる!!!
俺はまた一人、女を落としてしまった罪な男だ…。そんな風にドヤってると────
「いてててっ!おいコラやめろ!お前の大好きな兄が嫌がってるだろ!」
ソリアに告白っぽいことをしたらサグメにほっぺをつねられた。それからなんじゃこんじゃしながら何とか魔法の講義へと戻した。
「だいぶ話が脱線したが、結局どうやって魔法って使えるようになるんだよ」
ソリアは本棚からずっしりとした分厚い本を取り出し、覚えているからか、一発で目的のページを開いて見せた。
「じゃあこの呪文を読んで、自分が手から炎を出す想像をしてください!」
本を見てみるとなんだか胡散臭いセリフを読みながら想像すると出来るらしい……
本当にそれで大丈夫なのか?
「要は”イメージ”だね。よくエッチな事を考えてる想像力豊かな兄さんならすぐ出来るんじゃない?」
「おう!そうだな!任せろっておい、それ褒めてるのか貶してるのかどっちだよ……」
「あはは!お二人は本当に仲良しさんなんですね!羨ましいです!」
「まあな、よく言われる。」
そう言われ、俺はサグメに顔を合わせるが、頬を赤くしながら目をそらされた。照れちゃって…全く可愛い奴め…確かにサグメとは喧嘩も時々するが必ず一晩で仲直りはするし、親が居ない為誕生日とかは、お互いプレゼントを渡し合ってたな…俺ら恋人かよ…そんな事を考えていたが、一旦深呼吸して気を取り直し、魔法の文を読み上げた。
「えーーとどれどれ…火の力を司る番人イフリートよ、汝の力を今我の前に形として現れよ?」
なんだこの中学生が考えそうな痛い文字は……俺はこの文を読むだけで本当に炎が手から出せるイメージは出来なかった為か、何も起こらなかった。
「なあソリア、こんな文読みながら、想像かイメージで本当に炎なんか出せるのか?」
「出せますよ!言葉の力は凄いんですから!」
「………」
ソリアは言葉強くそう言い、嘘をついてる風に見えなかった。それでもまだ信じられない。
こんな事を言いながらイメージとか…
「ふふん、兄さん本貸して。私もやってみるからどうせ兄さん出来ないって思ってるでしょ。魔法は…イメージだよ!」
こいつ日本で死ぬ前に絶対に好きな漫画あったろ。そんな流行ってるアニメのセリフっぽい事を吐いた妹は物静かにいいながら、手を前に出し文を読み上げる。俺は腕を組み、無理だろ…と思いながら見ていたら…
「火の力を司る番人イフリートよ!汝の力を今我の前に形として現れよ!」
そう言った次の瞬間!妹の目の瞳が一瞬ひかり、なんと手からソフトボールぐらいの大きさの赤い炎の玉が出て来て、壁に当たり
程なくして静かに消えていった。
「今見た!?本当に出たよ兄さん!凄い!」
「おい…マジかよ…」
サグメは相当嬉しかったのか、喜びながら俺に抱きついてきた。せっかくなので俺からも抱き返すが、
一体どうやったのか想像ができない。もしかして本当に自分の手から炎を出す想像が出来たら出せるようになるのか
「姉さん凄いです!一回であんなに綺麗な火の玉を出せるなんて才能の塊です!」
確かにサグメから出された炎は丸くて綺麗な赤色でメラメラと燃える神秘的なものだった。
「なあサグメ!お前は本当に文読みながら想像しただけで出せたのかよ!?」
迷いもせずに妹は答えを教えてくれた。
「本当だよ!兄さんももっかい騙されたと思ってやってみて!よく集中して”想像”をしてみて」
サグメはそうアドバイスしてくれた後引っ付けていた体を離し離れた。さっき本当にそれで妹の手から出たのをこの目で見たのでもう次は真剣に集中する為、俺は深く息を吸って目を閉じ手を前に差し出して、
自分の手から炎を出せる想像を頭の中でしながら…『例えるなら綺麗なお姉さんと夜二人きりで暖炉の前で温まっているシチュエーション』を想像するみたいに…
「火の力を司る番人イフリートよ!汝の力を今、我の前に形として現れよ!」
そう唱えた瞬間!頭の内側から熱い電気のような物が出て来て差し出してる手に吐き出されるような感覚の後、手から火花と同時にサグメのよりも大きいバスケットボールと同じぐらいのサイズの炎の玉が出て来きた!つい初めてで、今まで感じた事のない新鮮な感覚だった為つい余韻に浸りながら…
「すぅ…すごすぎるだろ…」
「レンさん凄いです!簡単な初級呪文であれほどの大きい球を作れるなんて!姉さんもそうですがお二人には才能があるんじゃないでしょうか!?」
「私より大きいの出せるとかなんか悔しい…でもすごかった。さすが私の兄さん。」
2人はそろって俺の事を褒めてくれた。女の子からなんかチヤホヤされてるみたいでなんか…
異世界に来てようやくラノベの主人公らしいイベントが来たぞ!これって俺が魔法の才能があってこの後魔法で無双してモテ期が来る奴だ!
「そうだろ!そうだろ!ハッハッハッ!魔法の才能があるこの俺様がこの世界にあふれる戦争をなくし…て……るぅ……」
「に、兄さんどうしたの!?しっかりして!ソリア兄さんに一体っ………」
妹が必死に助けようと声をあげているのを最後俺は自分の才能に調子に乗ってバカな事をほざいてる時に急にめまいがして勢いよく倒れたのだった─────────
双子の妹と同時に死んで異世界に来ました。 白熱の親指 @metorosan
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