方程式の壁
サイノメ
方程式の壁
そこが箱庭であった事が私の幸せだったのかもしれない。
私は幼い頃より数学が好きだった。
また私が次第に成長していく上で世の中の不確定さや不条理に対し、数式と導き出される答えの正確さはある種の癒やしであり慰めであった。
そんな私が数学者としての道を歩んでいくことになるのはごく自然な流れであった。
やがて私は正確と思っていた自然法則にも不確定要素が交じることを知り、再び世界に絶望する事となった。
全てが予測できる世界であるのであれば、その予測に従い生きていければ人々は概ね充足した一生を過ごすことができるであろう。
故に私は全ての未来が予測できる仮想世界を作ることにした。
さっそく学会や政府関係に手をまわし、スーパーコンピューターはもとより事件運用段階であった量子コンピューターも動員して仮想世界を作り上げた。
その世界はあらかじめ出来事が決められた予定調和の世界では意味はない。
私が目指したのは世界の不確定要素を把握した上で未来予測できるシステム。
やがて研究は実を結び、箱庭内のあらゆる要素を元としたランダムな現象発生させる装置と、現象を観測することで未来を予測できるプログラムの開発に成功した。
私はさっそくこのシステムを観測するため、箱庭に意識を送り込んだ。
事象を予測するシステムは想定以上によく働いており、突発的な災害を事前に察知できるそれにより私は大いに満足した。
この研究を更に拡大すれば、いずれは現実世界のあらゆる事象を事前に予測できるであろう。
私はその確信に心を踊らせていた。
しかしながら、この研究は失敗に終わった。
次第に予測の精度が落ちていき、最終的には既存の天気予報の方が当たる始末であった。
私は原因を探るため、現実世界に戻りチェックを行うも
システムに問題はなく、予測の精度も以前と同じに戻っていた。
故障の原因に首を傾げるわたしに助手が一言言った。
「システムの外から異物が混入下からではないか」と。
方程式の壁 サイノメ @DICE-ROLL
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