7話 自分という恥

 ……嫌な夢だ。これは、悪夢だ。

 目の前の僕は泣いている。大人の僕が可愛らしいうさぎのぬいぐるみを、手に持っているカッターで引き裂いていた。

「どうして可愛いものがダメなの」

「それは男の子らしくないから」

 幼い僕が泣いて、大人の僕も……泣いていた。

 誰も幸せじゃない。こんなんじゃ、幸せになれるはずがない。

 強制させるのは誰か。他人か。世間か。

「男の子らしくしないと、変な目で見られる」

 強要させるのは誰か。自分か。社会か。

 泣いている自分を慰めることもできず、僕は僕を守れるのか。

 自分を、自分だと胸を張って言えるのか。

 僕は、僕であることを恥だと感じている。

 でも裏では、幼い僕が泣いているんだ。

 本当は、嫌なんだ。

 意識が水面から浮上していくような感覚があった。

 一瞬、幼い僕と大人の僕と目が合った。

 二人とも、唇をわずかに開いて何かを言いかけていた。

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