無職の彼から別れのメール

ながくらさゆき

彼は無職で虚言癖だった

無職の彼と付き合ってた頃の話。

彼も私も20代後半でした。

出会いは友達の紹介でした。

その時、私は朝から午後2時までの仕事でした。

私が仕事から帰る途中、駅前に友達がいたので声をかけてみたら

「今から友達と公園で会うから一緒においでよ」

と言われ付いて行きました。

公園には男性が3人いました。

平日の昼間に何の集まりだろうと思いましたが、ただ公園でお喋りして終わりでした。

後で分かったことですが、この公園に案内してくれた友達も集まった友人達も全員無職でした。類は友を呼ぶというやつです。

それから彼とよく会うことになりました。

その男性3人の中で、彼が一番顔が良かったからです。


彼は仕事を3つかけもちしていると言っていました。でもお金が無いようでした。そのことについては、お給料は貯金やローンなどで消えてしまうのかなと私は深く考えていませんでした。

会う時は彼はいつも自転車でした。自宅から1時間離れたところで会う時も電車は使わず自転車。

デート場所は図書館や公園。

良いところがあると案内してくれるのは百貨店の試食コーナー。

食事は自分で作ったというパン。私にもくれましたが美味しかったです。

首からはハンドメイドの水筒入れを下げていました。遠足みたいですね。

水筒入れも帽子も着てる服も自分でデザインして作ったと言っていました。デザインの仕事は3つしてる仕事のうちの1つだと言っていました。


彼の家に遊びに行きました。お母さんが彼に「あんた、さゆきちゃんの為にさっさと仕事見つけなさい!」と怒っていました。「最近、ハローワーク行ってもすぐに帰って来ないからおかしいと思ってたら、さゆきちゃんに会いに行ってたのね!」との発言で彼が無職だと分かりました。

仕事は3つかけもちどころか、1つもしていませんでした。

お母さんは専業主婦で料理や裁縫が得意で、彼がいつも首から下げている水筒入れはお母さんの手作り。たまに持ってくるパンもお母さんの手作りでした。

服はadidasって書いてあるのにデザインしたと言ってておかしいと思ってました。


ある日「これ、僕がデザインして作ったんだ。君にあげるよ」とプレゼントをもらいました。

リボンの形をしたヘアピンでした。私の前髪が長いのでそれで留めるといいと言っていました。

そのヘアピンは可愛いけれど幼稚園の子がするような子供っぽいデザインだったので、私は髪には付けずカバンに付けていました。


彼がデザインして作ったはずのヘアピンでしたが、近所の雑貨屋で50円で同じのが売っていました。

「同じのが雑貨屋に売ってたんだけど自分で作ったの嘘だったの?」と聞いたら目が泳いでいました。

彼はお母さんに頼まれた買い物のお釣りを貯めて50円のヘアピンを私の為に買ってくれたようです。でも「僕がデザインして作った」なんて嘘つかれたのはショックでした。


他にも小さい頃有名劇団に入っていたとか、お祖父さんはお歌の先生だとか、実はバンドを組んでいてインディーズでデビューしたことがあるなどといろいろ自慢話をしていましたが、全て嘘でした。嘘がバレた時「バレちゃった」と言ってました。


結局彼とは別れることになりました。

彼からの最後のメールにはこう書かれていました。山崎まさよしさんの名曲「one more time, one more chance 」のように

「いつでも捜しているよ。どっかに君の姿を。ハローワークに行く時も、百貨店の試食コーナーに行く時も、図書館に行く時も、国道を自転車で漕ぐ時も、さゆきちゃんのことを捜しているよ。さようなら、さゆきちゃん」


私はこれらの場所でうろうろしていると、無職の元彼に遭遇してしまうかもしれない恐れがあります。


ハローワークの近くで自転車漕いでる元彼を見かけたことがあります。仕事決まってなかったのだと思います。冴えない顔をしていました。気付かれないように回り道をして逃げました。


嘘つきな元彼でしたが、私のことが好きだったのは本当だったみたいです。

お菓子を食べた時に出る包装のゴミを自分のポケットに入れて持っててくれました。自分でも持てるので別に嬉しくはないですが、今までゴミを持ってと言ってくる友達や彼氏はいたけど持ってくれる人はいませんでした。他にも優しいと思った出来事はありますけど今では「何で付き合ってたんだろう」と思っていて悪口にしかならないのでこのぐらいで終わりにします。お読み頂きどうもありがとうございました。









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