第18話 征討②

 ︎︎ヴァンパイアの王が襲ってきたから周りのヴァンパイア達も一緒に襲ってくると思ってたけど、案外このヴァンパイアの王というのはタイマンが好きらしい。そう言っても居ることには変わりないし、急に襲ってくるかもしれないから警戒はしてるんだけど、その分意識が割かれるから戦いづらいな。


「半身がヴァンパイアである私と渡り合う……興味深いですわね」


「傷を付けても再生してるし、渡り合えてるわけないでしょ」


 ︎︎普通によく見かけるヴァンパイアより再生能力が高い上に、そもそも普通のヴァンパイアよりも強い。そりゃあ王って呼ばれてるほどだし当たり前のことなんだろうけど。

 ︎︎それにネームド個体ってわけじゃなさそうだし、なんで産まれたのか分からないな。


「もっと楽しく踊りましょう?」


「楽しく踊るって……こっちは命懸けだっての」


 ︎︎切り札があるとしても僕は人間という括りの中にいるんだ、元々の力とか速さはヴァンパイアに劣っている。そこを鍛えたり、魔道具とかで補ってるだけだ。


「やばっ」


 ︎︎他のヴァンパイアにも意識は割いていたつもりだったが、あまりにもヴァンパイアの王が強くて意識を集中しすぎたが故に後ろから近づいて来ていたヴァンパイアに対しての反応が遅れてしまった。


「私の邪魔をしないでくださいます?」


 ︎︎さすがに使おうかと思ったが、ヴァンパイアの振るった剣は僕に当たる前にボロボロに砕けた。


「女王様! こいつは敵ですよ!」


「黙りなさい」


 ︎︎ヴァンパイアは女王様に触れられて灰になってしまった。恐らく王のスキルなんだろうけど、どういう代物なのか全く分からないけど少なくとも触られない方が良さそうだ。


「少し邪魔が入りましたわね。申し訳ありませんわ、それではもっと楽しみましょう?」


 ︎︎邪魔が入ることは気にしなくてよさそうだけど、正直戦況は何も変わってないんだよね。多少僕も攻撃に集中できるようになったけど根本的なところは何も変わってないからね、もっと何かプラスで僕が有利になる物を手にしないと。


「再生しませんわね……何かトリックでも仕込みましたか?」


「さぁね! 自分で考えてみなよ!」


 ︎︎はっきり言ってトリックなんて大層な代物では無いが、効いてるのならそれでいい。半身が人間でもヴァンパイアの特徴は持ち合わせてるようで助かった。


「さすがに辛くなってきたんじゃない? 僕はまだ無傷だよ」


「おかしいですわね、さっきから何回も触れているはずですのに。その剣も壊れないですし、人間はここまで丈夫じゃないはずですわ。貴方は人間じゃないので?」


「失礼だな、人間だよ」


 ︎︎これまでに人間と遭遇しない理由が分かった気がする。全員こいつに殺されたからだ。殺したのが一人や二人なら向こうも人間がどの程度の強さか分からないはずだ。

 ︎︎たまたま強かった、たまたま弱かったなどということがあるから。

 ︎︎ただ、人間の程度が分かるくらいこいつは……ここに来た人間を殺してきたのだろう。


「僕が来るまでに何人殺した?」


「そんなの覚えてませんわ。貴方達だって食べ物をどれだけ食べたかなんて覚えてないでしょう?」


 ︎︎確かにヴァンパイアからしたら人間なんて食べ物みたいなものだ。まぁそりゃあ僕だって食べ物をどれだけ食べたなんか覚えてないし、相当な数殺ってるだろうなぁ。

 ︎︎写真の大学の先輩を殺したのも絶対こいつな気がする。


「放っておけないな」





 ︎︎あれから何時間戦い続けただろうか、僕が短剣に纏わせた炎も気づかれて意味を成さなくなった。さっき付けた傷も段々と再生されていってるしもうそろそろ決着をつけないと疲労が蓄積してるだろうしそろそろ不味いかもしれない。


「私相手によくここまでもちますわね。相変わらず無傷なのは気に触りますが」


「やめだ、後遺症を気にして躊躇ってる場合じゃない」


 ︎︎僕がずっと隠してる特異体質、まぁ言ってしまえば僕はスキル持ちだ。使えば相手の攻撃なんて気にする必要は無い、何も考えず、攻撃だけをすればいい。


 ︎︎ほーら、相手も表情が変わった。代償? そんなもの知るか、ここで負けて一生妹に会えないより、後遺症を負ってでも帰った方がいいだろう?


「なぜ、なぜ当たらないのですの!」


「そりゃあ僕が消してるからさ。もう二度と僕に攻撃が届くことは無い、あとは僕から一方的に攻撃されるだけ……さよなら」


 ︎︎攻撃を気にしなくて良くなった礼の一撃は今までよりも速く、そして威力も桁違いだった。礼が繰り出したその一撃で女王は崩れ落ちた。


「あんた達の王はこれで終わり、仇討ちって言うのなら僕はまだやるけど……どうする?」


「や、殺れ!!!!」


 ︎︎まぁ王を殺されて逃げる従順な配下なんてどこにも居ないか。数は少なく見積って五十以上、元々ここを取り返しに来たんだ、見たモンスターは全員倒さないとね。


「僕が人間の強さと賢さを教えてあげるよ、ヴァンパイア。ここはお前らモンスターの場所じゃない、僕達人間の場所だ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

妹のダンジョン配信でカメラマンをしている僕、妹の配信に無双してる姿が映ってしまった 桜木紡 @pokk7

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画