AIボックス「税理士くん」

説明書

＜基本操作＞

　難しいセットアップ作業は必要ありません。

　電源を入れ、お家のWi-FiにAIボックス「税理士くん」を接続するだけで完了します。

　インターネットを通じて、常に最新の法制度を参照し自動で対応します。

　使い方は簡単です。

　まず、最初にユーザー登録を行います。

　本体のフタを開けて、マイナンバーカード、運転免許証、パスポート、健康保険証、クレジットカード、銀行の通帳またはキャッシュカードを箱の中に入れてください。

　本体のフタにあるランプが赤から青になったら、中から入れたものを取り出してください。

　それから、本体のフタにあるディスプレイに表示されたQRコードをスマートフォンアプリ「マイナビタックス」内のカメラで読み取り、マイナンバーカードの暗証番号を入力し認証します。

　ディスプレイに「登録完了しました」と表示されましたら、ユーザー登録完了です。

　あとは、日々のレシートや領収書、それから報酬の受領証や源泉徴収票等も全てポイポイと、箱の中に入れていくだけ！

　電子媒体の書類もスマートフォンで簡単にアップロードできます！

　NISAやふるさと納税制度、医療費控除にも対応！

＜確定申告時の操作＞

　本体のフタにあるディスプレイの「メニュー」より「確定申告」を選択してください。

　ディスプレイに表示されたQRコードをスマートフォンアプリ「マイナビタックス」内のカメラで読み取ります。

　これだけで確定申告完了です！　

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『無料・簡単』

　これらのキャッチコピーに釣られて、個人事業主たちは次々とAIボックス「税理士くん」を導入していった。

　実際、超カンタンで、みな確定申告のストレスから解放された。

　しかし、これによって、全ての金の流れを国に把握されることになった。

　銀行口座だけでなくタンス預金も把握された。

　なぜならば、AIボックス「税理士くん」には、同じWi-Fiに接続された全てのコンピュータへ侵入を可能にするスパイウェアが入っていたからだ。

　スマホやパソコンについたカメラから室内にある紙幣がAIによって自動マッピングされ、これによってタンス預金も全て可視化されたのだ。

　当たり前に取引先とのメールも全て閲覧された。

　脱税の摘発が増えた。みんな追徴課税に怯えることになった。

　しかし、税収は確実に増え、国は取りっぱぐれがなくなった。

　国税庁はこの成果を内閣府に報告した。すると今度は警察庁の公安部が目をつけた。国民生活は丸裸となった。意図せずして国民はカンタンさと引き換えに、超情報監視社会を受け入れることになったのだ。

　日本はより平和となった。犯罪は未然に防がれ、また仮に起こってしまったとしても通報する間もなく警察官が駆けつけた。家庭内で起きる犯罪での立証でも役立つようになった。

　家で一人で倒れてしまっても自動で救急車が駆けつけてくれる。

「やましいことがある人が文句言ってるだけ」

　SNSなどでこういった意見が多数派を占めるようになった。

　便利・簡単と情報管理・監視社会は表裏一体である。

　どちらを取るかは、あなた次第。

（了）