第2話

 ってその学資金で全員大学に入れて卒業できたものの。

 一果は新卒の会社をたった一年でやめてふらふら転職を重ねて定職に就いたかと思ったらどこの馬の骨かしらん男につかまっていきなり子供出来たと家に帰ってきたときは困ったもんだった。

 詩織も困惑していたものの孫もいてにぎやかな生活ではあったが。婿は本当におとなしくてなぁ。ナヨナヨして情けない。


 仁太に関しては一番あれやらこれやら期待して。男だから結構お金をかけたつもりが二流の企業に勤めて遊び惚けて。

 今日連れてきている若い女性……ここに連れてくるのも何人目なんだ。

 三佳に関しては上の二人を見ていたのか結婚が慎重になってしまい、なんとか数年前結婚した。

 が、しかしなかなか妊娠せず不妊治療の末に妊娠した。ほっとしたもんだ。


 それにしてもこの棺が指定されたのも詩織の遺言通りである。どこから見つけてきたんだ……こんなの。てかこんな種類あるのか。知らなかった。

 葬儀屋もうまく考えるもんだな、燃えたら一緒だろうに。はぁ。


 詩織は入院のさなか、もう余命残り僅かであろうという彼女がいつの間にか用意していた遺言。

 俺に相談もなしに。いつもそうだ。俺に何も相談せずに色々決めるから。

 一家の主人は俺だぞ!


「お母さんらしいよね。この棺もさ。他にはなさそうなデザイン。こういうのが好きなんだよね」

 と一果。確かに昔から一点ものや他の人とは同じようなのは持ちたがらなかった。贅沢な。


「実際母さんが葬儀場のイベントでいろんな棺に入って確かめて決めたんだぜ。ああこれは狭い、これは寝心地がいいけども少し狭いわーとか言いながら」

 と仁太。葬儀屋のイベントに行ってたのか……。しかも実際に棺に入った?! 


「お墓も決めたんだってね、駅前のお寺。あそこだったらみんな行きやすいよね」

 と三佳。駅前……電車の音がうるさいじゃないか。


 そうか、墓の場所も決まってるのか。


「で、どうする? 親父の遺骨もそこに入れるのかよ」


 

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