箱庭に生きる

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箱庭に生きる

 ある哲学者は、生まれてきた意味を知ろうとした。


 ある創作家は、自分の理想を思い描いた。


 ある天文学者は、宇宙の果てを知ろうとした。


 ある数学者は、この世界の仕組みを知ろうとした。


 ある宗教家は、すべては神のために在り神の意思に従うべきだと説いた。


 ある政治家は、自分たちがつくってきた歴史に頭を悩ませた。


 ある経済学者は、自分たちがつくったメカニズムについてさらに研究し議論した。


 ある環境学者は、自分たちが住んでいる星と将来に目を向けた。


 ある裁判官は、自分たちがつくったルールを信じた。


 あるボランティアは、他者のために闘った。


 ある会社員は、仕事に疲れて休日を欲した。


 ある学生は、何のために勉強をするのかわからなかった。


 ある人は、幸せを探し求めた。


 ある人は、すべてどうでもいいと思った。




 「この宇宙はよくできているな」


 「はい。ある生命体に、私たちに及びうる『知恵』を与えました」


 「『知恵』か…。くれぐれも我々に危害が及ぶようなことがあってはならんぞ」


 「大丈夫ですよ。すべては私がつくった箱――いえ、箱庭の中での出来事ですから」


 「ならばよい。それにしてもは本当に生命体なのか…?生来のプログラムに沿っているようにしか見えんが…。とても生きているとは思えん」


 「ふふっ、おかしなことを言いますね。貴方が言った通りだとすると我々以外はすべて生命体でないことになってしまう。それは違います。多少のプログラムはあれど、それは思考中枢の構造の問題で、些細なことです。少なからずプログラムは施されているのですよ。」


 「そうか。君はやはり天才だな」


 「いいえ、それも違います。私にはほんの少しのがある。それだけです」


 「そうなのか。天才の言うことは難しくてよくわからんな」


 「そうですね。貴方たちは理解しなくても良いでしょう。我々より遥かに高次な者の存在なんて認めたくないでしょうから。しかもそれが無限に連鎖することも…」

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