第55話 最終話


 ~ローレンス王国国境砦~

 連合軍の誰もがバベルの勝利を信じて疑わなかった、そしてそれに答えるように勝利し帰って来たバベルを皆が祝福した。

そこには獣人もエルフも人間も皆が一つになってこの世紀の大決戦に勝利した喜びを分かち合った。

ラドルフが満面の笑みを浮かべてバベルを出迎える。

「流石だな、やったな。」

そうしてがっちりと腕を組みかわす。

「色々あったけどなんとか勝てた。」


「白虎にクエイドもありがとうなー」

そう言って白虎とクエイドに手を振る

白虎はにっこりと微笑んだように言った。

「どうと言うことは無い。」

そうして白虎とクエイドは住処に帰って行った。


それを見送る様にバベルは声を掛けた

「今度二人におみやげ持っていくからなー。」


そして何処からともなく沸き起こるバベルコール・・・。


「「「「「バベル」」」」」


「「「「「「バベル」」」」」」


「「「「「「「バベル!」」」」」」」


「ありがとう皆の声援はしっかり届いた。」

バベルは照れくさそうに頭を掻いた。


そうしてその日は砦に戻り連合軍で祝勝会を上げた。

皆がこの世紀の決戦を制した大英雄に一杯酒を注ごうと列まで出来てる始末だった。

もうそんなに飲めないと断るバベルだったが、せめて一杯だけと続く人の列が終わる事は無かった。

ラドルフも今日はバベルに大人しく皆の気持ちを受け取るんだと観念させるように言って笑ってた。


 世紀の大決戦を終え不安が払拭され、至る所でバンザイの掛け声が上がり皆が勝利と平和の喜びを分かち合った。バベルもその日は皆に酒を注がれ酔いつぶれる様に眠ったのである。


~翌日


 連合軍は王都へ向けて凱旋した。行きかう人々からお礼や感謝の言葉が送られる。救われたのはこの国だけではない、隣接するラグナロア共和国もベルランテ帝国も救われたのである。


 数日掛けて王都に辿り着いたそこでも烈烈な歓迎を受ける、国全体がこの決戦の行く末を按じ見守っていたのである。

その喜びようは一入ひとしおで、感謝の言葉と共に決戦を戦い抜いた連合軍に贈られた。

王都には帝国や共和国の援軍も到着しておりその歓迎は大層なものだった。

ジュリアもその場に来ており、バベルを見つけるなり駆け寄って来た。

「聞いたぞ、大層な働きだったそうじゃないか、あのデュークに勝利したんだってな。」

「皆のおかげだ。」

「帝都に居るアンナにも知らせは届いているだろう」

「そうかこれでアンナも安心してくれるな。」


そこでもやはりバベルの周りは人だかりが出来てた、この決戦の立役者である大英雄に一言感謝の気持ちをと押し寄せる人々にもみくちゃにされそうになってた。


そしてその日は王都にて祝勝式典が催された。

バベルはジュリアに早く帝都に帰りたいので先に帰っていいかと問いかけたが、即答で却下された・・・

この場でバベル抜きで誰を功労者に上げるのかと、このお祝いムードをぶち壊しにでもしたら国家間の問題だと怒られ、この戦で第一の功労者はシュンとなったのである。


式典は始まりやはり一番の功労者としてバベルは表彰され、ローレンス王国からも感謝の意を表し物凄い金額の褒美が贈られ、皆からは英雄バベルとして褒め称えられた。


心のどこかではそう褒め称えられたいと願ってた事もあったはずのバベルだが、長い間暴勇バベルとして人々からは畏怖と敬遠の眼差しで見られる事に慣れて生きて来たので、実際にそうやって褒め称えられると嬉しい気持ちはあるが、戸惑うばかりだった・・・。


だが嬉しい事もあった、この連合軍で団結して一つの敵に立ち向かった事で三国の絆が深まり同盟国として後日調印することになったのである、これで共和国と帝国の長きに渡る戦争も終結したのである。

その日はバベルも観念して盛大な接待を受けた。


~そして数日後


 ようやくベルランテ帝国に凱旋して帰って来たのである。

帝都に着いた時のバベルの歓迎のされ様は生半可なもんでは無かった、至る所に大英雄バベルという垂れ幕が掲げられてるのである。バベルは相変わらず嬉しいやら恥ずかしいやら複雑な心境で戸惑っていた。

ここでもバベルの周りは人だかりだった、帝都の皆から感謝の意と祝福の言葉が飛び交うのである。


 どうにか逃げる様にバベルは城の中に入って行きアンナの部屋を目指した。

アンナも必ずここに来てくれると部屋で今か今かと待っていたのである。


部屋に入るなりアンナは飛びついてきた、微笑みながらもその眼には涙を浮かべながら・・・


「バベル様・・・おかえりなさい・・・グスン・・・」

「ただいまアンナ」

そうしてバベルはきつくアンナを抱きしめた、そうしてアンナに優しく囁いた。

「これで全て終わった、二人でアンナの家に帰ろう」

「・・・グスン・・」

アンナの眼から涙が溢れ出して止まらなかった・・・無言で抱き着いて離れない・・・それがアンナの返事だった・・・


言葉に成らない胸の熱い思いがこみ上げてくる二人はしばらくお互いの無事を確かめる様に抱き合った。


この時だけはそっとしてあげよう、思えば二人で村を飛び出し最初は不安の連続だった・・・

いつもアンナが傍に居てくれたお陰でバベルは自分を見失うことなくやり直すことが出来た。

今二人は色々な思いが駆け巡ってる事であろう・・・

町に出て行くなりこれまでのバベルの行いを認識させられるように復讐にあい

賞金稼ぎからは狙われ・・・

挙句には罪人として帝都へ連行され・・・

思えばアンナには不安の連続だったはずだが、バベルの前ではそんな気持ちは微塵も見せなかった。

この無言の涙がその言葉に成らない思いを語っているのをバベルはしっかりと受け止めた。


「アンナには色々苦労かけたな・・・」

「・・・全然・・・頑張ったのはバベル様です・・・」

「これからも苦労かけることもあるかも知れないが一緒に居てくれるか?」

「・・・地の果てまでも・・・・」


そうして二人はそっと口づけを交わした・・・


そうしてやはり、ジュリアから呼び出しがあった。


バベルも内心ではまためんどくさい式典とか有るんだろうかと思ってたが、的中した。

ベルランテ帝国でもやはり祝勝式典が開かれるとのことで、今度ばかりは皇帝から直に褒美を受け取らないといけないとの事だった。

ジュリアはバベルに今後どうするのかと聞いた。


「しばらくはアンナの生まれ故郷のベリーサ村でゆっくりしたい」

「ということは、この帝国に滞在するということだな?」

「あぁそうなるとおもう」

「バベル今度ばかりは爵位を授与しなければならない」

「そういうのはいらねーよ」


「バベル、そういうわけには行かないのだ、帝国がこの大決戦の一番の功労者で大英雄に爵位もあたえないとなると他所の国に対する体裁が悪いのだ・・・よってバベルがこの地に残ってくれるならその地を治める公爵に任命しようと思う。」


「そういうのは俺には無理だぞ・・・」

「今後アンナと所帯をもつのだろ、それなら生まれてくる子の事も考えろ!」

「・・・だが俺には務まらんぞ・・・」

「大丈夫そこは優秀な執事をつけてやる」

「んじゃ俺は何もしなくても大丈夫か?」

「大概の事は執事がやってくれるようになってる」

「・・・・」

「よし決まりだな公爵をうけてくれないと父上は大公を授けるとか言ってるのだぞ、そうなれば否が応でもいろいろとめんどくさい事をしなければいけなくなる」

「だから父上にはバベルに公爵で手を打ってもらった事を内々に話すから」

バベルはそれでも納得してない様子だったのでジュリアは、わざと耳打ちした。


『・・・ここが落し所だ・・・』


「あはは、それを言われたら受けるしかないな」


ジュリアが自分の為に精一杯やってくれてる気持ちが伝わりその心意気に答えようと思った。

そうしてしばらく、二人は連行された当時の話で盛り上がった。


ジュリアは父であるシュニッツアー皇帝に、バベルが帝国にて暮らす事と公爵の爵位を受けてくれると言う事を話した。シュニッツアー皇帝も大層それを喜んでくれた。


そうして式典が執り行われ皇帝よりバベルに爵位が与えられた。


「今後お前を、『バベル・ベルーシュ公爵』に任命する。」

「有難く承ります。」


そうして皆はそれを祝福した、ジュリアも満面の笑みで祝福していた、ジュリアも内心ではバベルに豊かな人生を送ってほしいと願っていたのである。

そしてその日は国を挙げて祝福の日となった


 綺麗に着飾って式に参列していたアンナがバベルの横に駆け寄り、

「べルーシュ公爵様素敵ですね・・フフッ」

わざとらしく気取ってバベルが言った。

「そうかね、べルーシュ公爵夫人も素敵だよ」

二人は幸せをかみしめる様に少し照れながら笑いあった。


そうして無事に式典も終え数日後アンナの生まれ故郷へ帰った、ハクも一旦霊峰へ戻り、フレイアも帰って行った。


暫くしてアンナの生まれ故郷にバベル・べルーシュ公爵にふさわしいようにと、皇帝の命により大豪邸が建築された、そうしてかの大英雄の治める地にと沢山の人が押し掛ける様になり、その地は一気に栄えて行った。


バベルとアンナに一人の女の子が誕生した、名はレイアと名付けた。

もちろんあのフレイアからその名を取ったのである。


そうしてバベル達は末永く幸せに暮らすはず・・・・







~魔界のとある霊室にて~


ゴゴゴゴォォォォ・・・


・・・・大儀であった我が息子よ・・・・




             ~Fin~





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


後書き


まずは、ここまでお付き合い頂きありがとうございました。この後バベルの娘が活躍する話は、またいつかにします。


最後に


人が生き方を変えるというのはとても大変なことだと思う。


けれども、今更、絶対無理と決めつけて行動しなければ何も変わらずのままだ。


 

行動を起こすのに遅すぎるという事は無いと筆者は思う。踏み出す一歩は、大変な事かもしれないが、あとはその行動で示すだけ。大英雄でなくても誰かから、「変わったね。」その一言でもいいのではないだろうか。


この物語を通して、あなたの心に何か残れば幸いです。

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全ての力を奪われた暴勇バベル おにまる @onimaru777

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