第54話 託された声



 ~ローレンス王国国境砦~


 ラドルフはバベルの勝利を信じていた、おそらく連合軍の全員と白虎とクエイドとハクも勝利の報告が来るのを今か今かと待つのみ。

(あいつならきっとやってくれる・・・)

そして思わず叫んだ・・・


「バベル勝って帰って来いよー」

ハクが叫ぶ

「バベル殿おおおおおおおお」

それは山にコダマするほど大きな声だった、カズヤが続く


「バベル殿おおおおおおおお」


そしてあちらこちらからバベルを呼ぶ声が響いてくる。


「バベル」「バベル・・・」「バベル様勝ってくださいー」


・・・そしてそれは大合唱になる・・・


「「「「「「「「バベル!」」」」」」」」」


「「「「「「「「バベル!」」」」」」」」」


「「「「「「「「バベル!」」」」」」」」」


それは国中にも響き渡るような大声援だった。

山々を響きわたりバベルコールが鳴り響いた・・・

砦にいる連合軍の全員がバベルの勝利を疑わず声援を送った・・・・

だがすでにその声はバベルには・・・・届いているのか・・・・



 ~魔界の要塞最上階~



 デュークは高笑いしながら部屋を出ようとした・・・・が。

後ろに動く人の気配を感じる。


そこには決死の覚悟で飛び込んできた者が居た!。フレイアが必死にバベルに手を当て全力で回復させてる姿があった。

「バベル君おきなさい!あなたはこの世界の希望の光でしょ!」


だがバベルの止まった心臓は鼓動してなかった、もはや回復は意味をなさないのかもしれない・・・


「小賢しいこのハエがああああ」


怒鳴り上げながらデュークがフレイアを蹴飛ばす。

なんの力もないフレイアは無残にも吹き飛ばされ転がっていく・・・


「バベル君・・・あの声が・・・聞こえるでしょ・・・」


フレイアが渾身の力を振り絞りデュークに手をかざす


「無駄ですよあなたの能力は知ってます」


【暗黒鉄壁障壁】

あらゆる魔法に完全に抵抗する障壁でその技から身を守るデューク

それでも必死に力を奪おうと全力の力を奮い立たせそのかざした手に力を注ぐ

さすがのデュークも今は動けない。


「聞こえないの!? バベル君あなたを呼ぶあの声援がああああ!」


バベルは今までにも勇者らしい事をしたことはあった、でも暴勇バベルがした事はたんなる気まぐれで、だれからも褒め称える声は無かった・・・


声援を送るどころか人々は家の窓を全部閉めバベルが通り過ぎるのをただじっと待った・・・


そうしてさらにバベルの心はすさんで行きもっと強くなれば・・・


いつしか皆が自分をみとめてくれる・・・


だがその心の闇は魔界でさらに酷くなりとうとう手のつけようがないほどに・・・

だが今は違う、皆がバベルの力を必要としてる・・・


・・・バベル・・・・


(だれだ・・・俺を呼ぶのは・・・)


・・・バベル勝てよ・・・・


(誰かが・・・俺に声援を?・・・・)


・・・バベル君起きて・・・

(うるせえよ・・・くそ・・女神・・・)


トクン・・・・


ドクン・・・・


(そうだ・・・アンナは俺が守る・・・皆のために・・・俺はまだ・・・)


そうして初めて人の為に、皆の為に力を欲した・・・

己の為では無く・・・愛する者達を守るための力を!


白虎に貰ったその首飾りが光る・・・


ピクリとバベルの指が動いた。


今はもうバベルの事を暴勇と呼ぶものは居ない・・・

今、援軍としてローレンス王国に駆けつけてるジュリアも

(あそこにはバベルがいるんだ大丈夫だ・・・・)

全ての人がバベルの勝利を信じてバベルに希望の光を感じて待っている。


~ベルランテ帝国で留守番中のアンナもロレンス王国の方角に膝をつき祈りをささげる。

(バベル様ならきっと大丈夫・・・)


全ての人の期待と希望を背負って・・・

もう昔の己の為に力を欲し己の為に力を行使した暴勇は一度死んだ・・・


バベルの体が眩い光のオーラで包まれる

そしてバベルがゆっくりと起き上がる


「お前は死んだはずだろうがぁああああ」

デュークがさらにとどめを刺そうとした時・・・

バベルの体が一段と強い光に包まれる・・・・皆からもらったチャンス、期待を力に変えて愛する者のために再び甦れ!


「うぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお」

___テッテレー【バベルの真骨頂】獲得___


バベルが究極に追い込まれ、初めて己の為では無く、愛する者の為に力を欲し、愛の為に力を使う事を願った時に眠れる本当のバベルの真の力が覚醒するものであった、いわゆる火事場の馬鹿力である。


人は愛する者を窮地から助けようとする時など信じられない力を発揮する事があるというが、今のバベルがその力を発揮すればどれくらい凄い物なのか想像もつかない。


「すまねぇフレイア助かったぜ、もう大丈夫だ」


そしてバベルから溢れんばかりの光のオーラが立ち昇る・・・

「デューク、寝起きの俺は機嫌が悪い、よくも仲間を・・・・」


【バベルマキシマイズ】

【バベル波動】ドゴオオオオオオン、バリイイイイン、ドゴオオオオオオオンン!!


デュークの障壁をも貫き吹っ飛ばすバベルの力、それは全盛期をしのぐ程だった。


「これで終わりにしよう、お前は俺の愛する人たちに手を下すことは出来ない、決着をつける!」


「小賢しいわあああああああ!」

【ヘルバーストストライク】


【ライトニングバベル】


ーズキュウウウウンンン!ー


バベルが光の矢となってデュークを貫く!


血反吐を吐き壁にもたれかかるデューク・・・


 静寂が勝負の行方を示した・・・


「もはや・・・ここまでか・・」


・・・最後に我が力をあなた様に捧げる・・・わが父魔王よ・・・復活せよ・・・


デュークの額に魔法陣が浮かび上がる・・・


咄嗟にバベルがデュークの首を切り落としたが間に合ったか・・・

そしてデュークは元の姿に戻り、息絶えた・・・


「フレイア大丈夫か?」

「全然大丈夫じゃないよ・・・死んじゃうよ・・・」

「それだけ喋れれば大丈夫だな・・・ありがとな」


そしてバベルは急いで帰ることにしたが、デュークの万が一の復活を阻止するために首は持ち帰った。

フレイアを担ぎ光の速さで要塞を抜け出しゲートめがけて走りこみ魔界を脱出した。

念のためにゲートは破壊することにした。


そうしてローレンス王国の国境砦が見える所まで戻って来た。

白虎とクエイドがバベルには見えた。

「白虎とクエイドも来てくれてたのか・・・」


「フレイア一度しかいわねぇ・・・」

「うん?・・・」

「俺の力を奪ってくれてありがとう、俺に生まれ変わるチャンスを与えてくれてありがとう・・・」

「あたしも鼻が高いよ・・・グスン・・・」


そう、暴勇バベルは皆の期待に応える大英雄バベルに生まれ変わったのだ・・・


そして皆がその大英雄の帰りを待ってる・・・


そうして砦に向かい、歩いて行きそのデュークの首を突き上げた!


その瞬間砦から一斉に歓声が沸き上がる、大英雄バベルは皆の期待に応え、この世界を揺るがす大決戦に勝利したのだ!




・・・・全ての関わった人に感謝を込めて・・・・





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

後書き


お付き合い頂きありがとうございます。

あと一話でこの物語も終わりとなりますが、お時間が御座いましたら、あと一話お付き合い下さい。




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