THE・内覧:あの建物を内覧せよ

@manta100

東京地下2000m/株式会社ドラスヘッド本社ビル

「グギャアアアーーーッ!!!」

強化改造人間である悪の組織・ドラスヘッド生産の戦闘員がぶっ飛んで行く。

バチバチと涙の音じみた、千切れた専用電力供給ケーブルから立つ火花。

血しぶきじみて垂れる高級アンドロイド用オイルが寧ろその存在が絶命している事を如実に示していた。


「へぇ~い、それで?オタクの物件に住んでる人々は――」


その言葉の最中に、音もなく背後から飛び掛かる二人のドラスヘッド戦闘員。

いかにも古典的とさえいえる鉤爪を両手に装備したそれはしかし。


「――皆、物騒でございますなあ!」

飛び掛かられた男――武器は右手に持った処刑剣エクスキューショナーソード

場違いと言えるほどの佇まいであるバリっと決まった黒スーツは返りオイルで薄汚れており――


ザ  バ  ッ。

無造作ともいえるほど自然に振り向いて。

一太刀で二人の戦闘員を切り裂き、またスーツにびしゃりとオイルがかかる。


「奇襲のつもりなら、もっと殺気を消せってんだ。汚れっから嫌なんだよ」

どん、どん。両断され4つのパーツに転職した元・戦闘員が落ちる。


『な……なんだというのだ貴様は……!』「お?」

基地内に備え付けの通信設備から悪の大首相を名乗っていたものの声。

…このありさまではその座から堕ちるのも間近だろうが。


『突然我が基地へ乗り込み、怪人どもを殲滅していく…明日には世界征服計画の最終段階へ入るというのに!』

『いったい何が目的だ!金か!?それともモノか!』


狼狽しきった声が男に問う。

…問われた側ははあ、と軽くため息を吐いてから。


「だーかーら、内覧だよ、内覧。知らんの?悪の組織の人って」

『な――』

当然だろう、と言わんばかりに頬を掻いて答えた。


「こっちだってオシゴトでやってんの、やりたくもねーが給料の為――」

『内覧で組織一つ潰されてたまるか!?』

「あーもー、うっさいうっさい。抵抗してくるのが悪いんだろ?」

がしゃん、と処刑剣を突き刺して放送を止める。


「さて、これでまだ三分の一か……めんどくせーなあ」

肩に剣を携え直し。


「しらみつぶしってのも大変だが、ちゃんと見ないと叱られるからな……」

また、当然のように歩き始め奥へ進んだ――



その日、日本全土を震撼させていた悪の組織・ドラスヘッドは壊滅した。

突然の事に、日本中が騒然となり憶測が飛び交ったが、誰もその真実を知る者はいない。



「へぇ~い、内覧ですよー」

「いらっしゃいませー、何名様ですか?」

「一名で」

「ご注文は?」

「ラーメン屋なんだからラーメンに決まってるでしょ…」


男は席に座り、内装を見渡して。


「なるほどね、いい内装です」

そう零したのだった。

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