海-1

えっ!

「お弁当やばくない?凄い!」

伊織と四季は曲げわっぱのお弁当箱を開けて一瞬驚いてふっと笑った。


豪華という訳ではないけど色が綺麗で何よりめちゃくちゃ美味しそう。


「お母さん?料理上手いんだね!」

「お母さんは料理しないよ。これは四季が作ったの」

「朝辛いし、こったもんは作れないけど俺が料理担当」

「えっ四季君が作ったの?凄い!!」

「呼び捨てにして」

「え?」

「君って壁を感じる」

四季は照れながら笑った。

四季は笑うと可愛い。

私も恥ずかしくなってきてなんかドキドキする…


「ごめん。四季は料理ができるだね。いいなぁ」

「海のは?お母さんが作ったの?」

「私のはパパが。でも夜ご飯の残り物ばっかりだよ」

「そうなんだ!うちら料理男子が近くにいてラッキーだね」

伊織は楽しそうに笑った。

料理男子?パパも男子か。笑


「四季は何科なの?」

「えー海。四季に興味あるの?」

「えっ…」

伊織が意地悪くきいてくる。

興味は…ある。こんな綺麗な男の子初めて見た。

興味しかない。

もしかして芸能?とか、なくはないよね。


「俺は服飾だよ。制服に緑色っぽいライン入ってるでしょ?」

「茶色が服飾なんだ〜ちょっと芸能科かと思っちゃった」

「四季が芸能?無理無理」

伊織が笑う。

本当伊織はよく笑う。四季は対照的に冷静。

面白い。

性格も違うけど見た目も全然違う。

伊織はガッチリしていて太ってはいないけどムチムチしているけど、四季は体が薄く中性的な雰囲気。


「伊織はお笑い芸人っぽいからいけるんじゃない?」

四季が笑いながら言った。

「お笑いの子とかいんのかな?って失礼だよ!」


仲良いな。羨ましい。


お昼の時間も終わり伊織と二人で教室に戻る。

四季は少し寂しそうにまたね。って言った。

その顔が頭から離れない。


伊織、私やっぱり四季のことが少し気になるかもしれない。

そう思った時、伊織は嬉しそうに言った。

「四季と仲良くして欲しいんだ。四季ね…中学時代は嫌な事しかなかったから高校は楽しんで欲しいんだ」

「え?」

「見た目が女の子みたいだしやる事も男っぽくないでしょ?」

「まぁ、言われてみればそうだけど」

言われなくてもそう思ったけど…

「だから女の先輩から付きまとわれたり同級生の男から嫌がらせされたりして、軽く人間不信なんだよね」

「辛かったね」

「いじめほどにはならないんだけど、守ってあげないと不安で同じ高校にしたよ」

「えっ。M高を志望した理由がそれ?」

驚いた。伊織は四季に合わせて選んだだけ。


特進コースの偏差値は70。

頑張らないと入れない。

「そうだよ。ブラコンだよね」

伊織は苦笑した。




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忘れ者 夜うさぎ @a_me

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