第25話 まずは死ね
「ははははは、とうとう我は死んでしまったぞ!」
「まだだ。…おい、こいつも行人なのか?」
「いや…、どちらかといえば僕の同類だよ」
明神山での修行。
スズミが進化して真人になるという、最初から荒唐無稽な設定で始まった。
白装束を着せられ、俺たちが持っていた収納は没収された。
「というか、修行するのはスズミだけだろ?」
「僕たちも一緒にするんだよ」
「ははは、ナナは死ぬのが怖いか」
「お前はなぜあっさり受け入れるんだ」
「お前ではない、チエだ」
行人としての修行は七日七夜。ただし、そこで終わるかどうかは分からない。
「真人に昇るか否か、それを決めるのは我らではない」
「必ずなれるってわけでもないのよ」
「で、ではお后様は…」
「ああ、あれなぁ。あれは」
「あんなのがなれるわけないでしょ」
領主とヨシオからは、スズミと同じ修行を現在の王后もやったと聞かされていた。
スズミはそれを知って、王后への尊敬の念を深くしたのだが、山の先達を名乗るミコトとナギは鼻で笑った。
王后はそもそも、真人になるような修行をしていない。
ナンバーズの王ミツの子を宿すことは難しく、隣に立つ資格を得ただけだという。
「あれは全く才がなかったわね。やる気だけはあったから、加護はもらったけど」
「加護?」
「え、そんなことも知らないわけ? そこの彼は何してたの?」
「僕も会ったばかりだよ」
明神様に詣でる者たちに、神は加護を与えることがある。
加護の内容はさまざまで、身体が丈夫になる、頭が良くなる、長生きする…など。
王后は、死にかけても何度かは助かる加護を受けたという。それは加護としてはかなり上位で、それなりに明神様が評価したのだとナギは言う。
神が評価した? 正直、俺はこの先達とかいう二人が人間なのか分からなくなっている。
「無駄話はこれぐらいにしよう。では今より我らは死ぬ。山に入り、明神様に抱かれ、そして生まれるであろう」
「生まれるとは限らないわ。その時は仕方ないのよ」
「なっ…」
さらっと恐ろしい台詞を吐くナギは、スズミとチエという超絶美人二人と比べても遜色のない顔立ち。体つきもチエと同じぐらいだから、人間としてはかなり大柄だ。
隣のミコトは俺より背が高く、ボロボロの白装束から覗く身体はスズミも逃げ出すほどの筋肉量。
まぁ、悪い意味で俺たちと同類なんだろう。
「我が後について唱えよ。我スズミ、キョーイッピキィエェェサンボーシージョーギョーギョーニー」
「わ、我が後について唱えよ。我スズミキョーイーピキエエエ」
唱え言は何を言ってるのかだいたい分からなかった。
ただし、そこから真似するバカがいるかと、スズミ以外の全員が思ったに違いない。人類の進化に頭脳は関係ないのだろうか。
よく分からない唱え言を繰り返し叫ばされた後、その場になっていた長い棒をナギは思いっきり倒した。
棒というか、木の枝がついたままだが、ともかく倒れた瞬間に俺たちは「死んだ」らしかった。
「見よスズミ、その手の先、足の指先から徐々に青白くなって朽ちて行くぞ!」
「ヒ、ヒイッ!?」
「おい、こいつは置いて行っていいか?」
ここでの死は、あくまで概念的なものでしかない。本当に死んだら、きっと誰も生き返らせてなんてくれないのだ。
そう思わないスズミだから、進化できる?
そうかも知れないな。
※ここで飽きたのでおしまい。昔だったらこの先を頑張って書いたんだろうけどなぁ。
最強の女師団長をクビにする者たち――世界を混沌に堕とす者たちの騒がしい日々 udg @udg1944
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