住宅用ダンジョンへのご案内

いおにあ

住宅用ダンジョンの内見


 増加の一途をたどるわが国の人口。その対策の一環として政府は遂に、わが国の地下深く広がるダンジョンを住居用として使用することを許可した――



 こんにちは、お客様。ようこそ、スターライト・ダンジョン不動産へ。ご予約されていた方ですね。今日は住宅用ダンジョンの内見とのこと。それで間違いございませんね?それでは早速、行きましょう。


 まずはこちら。今一番人気のダンジョン第十層でございます。お値段の方もお手頃で、すでに多くの方が契約しております。


 例えば、この層のあちらこちらに存在する“宝箱ミミックレベル5”などは、ゴミ箱として大変重宝されております。大きさも手頃ですし、さすがはレベル5だけあって、燃えるゴミも燃えないゴミも、なんでもバリバリと食べてしまいます。おまけに外見は宝箱ですので、高級感もそこそこあります。いかがでしょう?


 え、本当にゴミ箱として機能するのかって?よろしい、見せてみせましょう。ではこの空き缶を、あの宝箱ミミックに投げつけてて・・・・・・えいっ!・・・・・・バリバリバリッ!!ほら、さすがはミミックレベル5、缶が当たった途端、目にもとまらぬ速さで食べてしまいました。


 まちがって人間が食べられてしまわないか不安?そこはご安心を。生きているものは襲わないような魔法をかけておりますので、100パーセント大丈夫です。


 ダンジョン内をうごめくモンスターへの対策のは?ええ、もちろん対処済みです。この第十層のトラップはすべて対モンスター用に改良しておりますので。皆さんは安心して、本ダンジョン内から通勤・通学することができます。


 もっと家賃が安いところをご所望ですか?できるなら、限界まで安くしておきたい、と。仕方ありません。当不動産がご紹介できるギリギリの範囲にまでいきましょう。ダンジョン第五十二層でございます。


 いかがでしょうか?この第五十二層、家賃の方は第一層の十分の一以下ですが――。この辺りになると、もうモンスター対策などはほとんどしておりませんね。やはり予算の都合といいますか・・・・・・。このレベルの層になりますと、常日頃から出現するモンスターもそれはそれは強力なものになりますので・・・・・・対策用のトラップなどにも膨大な費用がかかってしまいます。はい。


 あ、でも悪いことばかりじゃありませんよ。なんといっても家賃は格安です。というかタダ同然。それにこの辺りになりますと、ダンジョン生活を配信することによって、一財産築いた方もそれなりにいらっしゃいます。最初のうちは辛いかもしれませんが、それをネタに稼いだお金で、上層部へと引っ越す。あるいはより強力な武器や防具を手に入れ、モンスターたちを薙ぎ倒していくお客様も、なかにはいらっしゃいます。

 

 ・・・・・・さすがにここはちょっと無理?そうですか・・・・・・。いえすみません。私もちょっと、無茶なところをおすすめしたかもしれませんね。


 では、あいだをとって二十三層辺りにしましょうか?ここは比較的緑が豊かですし・・・・・・安全面も最低限ギリギリ保証できます。はい、それでは見にいきましょう。ただし、緑が多いということは、それだけ植物性のモンスターの出現率も高いということになりますので、そこのところはご容赦ください。


 え?俺は植物学者だ。植物系のモンスターごとき、ぶっ倒して煮て焼いて喰ってやる?それはそれは、頼もしい限りです。それでは参りましょう。こちらが、第二十三層でございます。

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