ヒサキ1

ゆう

第1話

 俺の記憶は全部断片的で、総合性がない。

 いま簡単に思い出せる記憶は女にしゃぶらせてる所とか疲れきって肩で息してんのを感じながら目の前に倒れてる血を流す男を見てるとこだとか、ドラッグでハイになってゲラゲラ笑ってるとことかそーゆーのしかない

 でも最近1番よく出てくる断片的な記憶があって、それは毎回白色から始まる

 白って言っても絵の具とか色えんぴつとかどこにでもあるようなやつじゃなくて色んな色が混じった透明みたいで綺麗な色なんだよ

 その出てくる記憶って断片的と言っても壊れたビデオテープの映像みたいなもんで、毎回瞬きして目を開けてるとこから始まるんだ。どの記憶でもな


 で、その白い記憶ってのは、まずぼんやりとした光があんだよ。それをよくよく見つめてみたら細い糸みたいなものが沢山垂れ下がってて、その糸は白色で光に透けてキラキラ光ったりオレンジ色とか黄色とか薄い青とかが散らばってる

 そのキラキラ光る糸をぼけーっと見つめて1番すきって思うんだ。だってこれ以上綺麗なものって俺見た事ないからさ

 なんか無性に触りたくて手を伸ばすんだけど、俺の手って暴力の振るいすぎて震えててガタガタで汚ぇから(あ、やっぱやめよ)って元の位置に戻すの。だってきれいな物は汚いもので汚しちゃダメだからな、俺それだけはわかるから


 んでまた見つめてると糸が動くんだよな。

 しゃらら、しゃららって音立てて俺の腹の上に垂れるの、その糸は髪だった。そう、髪だったんだ

 腹筋が付いた硬い腹の上で髪の毛は緩く弧を描いてる、髪の毛に反って目動かすとキレーな顔が俺を見てる。何度見ても見慣れない顔。

 いっつも動かない眉は柔くたわんでて真っ黒な目はとろとろしてる。寝起きなんだなってわかる

 柔らかそーな薄い唇が動いて俺の名前を呼ぶんだ

 そんで骨ばってるぬくい手の甲で俺の頬を撫でる





 この記憶が白色の記憶で、俺が最近よく思い出す記憶

 家で1人、離脱症状起こしてる時とか、正気に戻った瞬間とか、そりゃまあ色んな時にこの記憶を観る訳で最近困ってんだ。女とセックスしてる時なんざ本気で困る、思い出した瞬間にちんこ萎えんだもん。

 俺の下で広がってるのが白いろじゃない事にに違和感を覚えちまう。むっちむちでエロい体が固くて骨ばった身体じゃないって思った瞬間すっげぇ気持ち悪くて、俺が動く度漏れる声が変に甲高くて、五月蝿い。

その様子が吐き気がする程奇異に見えて殴ると低い声でう"って言うから面白くって、出すならその声で喘げよって吐き捨てて殴りながらセックスした。

 女の啜り泣く音が響くホテルの部屋、煙草の煙をゆっくりと吐き出す。口ん中がからっぽくて(乾いてて)体が怠くて気持ち悪かった

 目の前で揺れて消えていく灰色の煙の向こう側にあの白色が見えた気がした。

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