バッファローと内見

月這山中

 

 全てを破壊しながら突き進むバッファローが内見に来た。

「お部屋も破壊してしまうんですが、いいですか」

「いやダメでしょ」

 バッファローはすごすごと帰っていった。


 そこそこ破壊しながら突き進むバッファローが内見に来た。

「お部屋の破壊は我慢します」

「お願いします」

 物件へ案内した。

 バッファローの要望は駅徒歩5分圏内風呂トイレ別とのことだったので、条件に合う三部屋を周っていくことにした。


 一件目に入る。

 都内マンションの五階でバッファローの巨体も十分入る。

「こういう時ってドア・イン・ザ・フェイスですよね。高価な物件から入っていくやつ」

 ビジネス知識のあるバッファローだった。

「たとえそうだとしても、持ち帰って検討していただいてかまいませんよ」

 マニュアル通り対応する。

「うわ、景色いい。ここにしちゃおうかなー」

 気が早いバッファローだった。


 二件目。

 すこしグレードを落とした2LDKだが部屋は広い。

「お兄さんって結婚してるんですか?」

 一言多いバッファローだった。

「いいえ」

「いい雌紹介しますけど、どうします? 今度ファロコン(バッファローコンパの略)でも。自分桃鉄とかうまいんですよ」

 余計なお世話のバッファローだった。

「仕事に集中したいので考えてませんね」

 適当にあしらった。


 三件目。

 駅から徒歩10分と遠ざかったアパート。広い。

「ここだけユニットバスなんですよ」

「う~~~~~ん、この際それでもいいかな~!」

 ちょろいバッファローだった。

「結局、壁とか破壊したら一部屋になっちゃいますもんね」

「賃貸なので破壊しないでください」

 お客様とはいえ流石に諫める。

「持ち帰ってもいいですか」

「どうぞ」

 意外に慎重なバッファローだった。


 バッファローが内見に来てから三日目。

 連絡が来た。

『資料つい破っちゃったので、コピー送ってもらっていいですか?』

 資料をコピーした。


 四日目。

 バッファローが来た。

「実は広い部屋って落ち着かなくて……他いいですか」

 最初からそう言って欲しい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

バッファローと内見 月這山中 @mooncreeper

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ