第2話 内見者達
起き上がると、満点の星空だった。
突然の出来事に何も口にすることができないでいると、俺の顔をヌッと誰かが覗き込んだ。
「お、目覚めましたかな?」
牛だった。
それも円錐形の角が上向きに伸びている、いわゆる
驚きも続くと麻痺するもので、俺の顔を覗き込むその水牛の顔を見ても「喋る熊とくれば水牛もありかあ」などと呑気なことを思うだけだった。水牛の顔に人間の体がついている。ぴっしりとしたスーツで身を固めたその姿には雄々しさを感じるほどだ。心を守るある種の防衛本能とも言えるかもしれない。
「ここは?」
俺は体を起こす。辺り一面、広々とした平野が広がっている。
「あなたも招待状を受けた口でしょう。他にもほれ、何人かいらっしゃっております。あ、
「はあ」
俺はローが指し示した方を見た。確かに俺とロー以外にも誰かいる。彼らも俺が起きたことに気づいたのか、こちらへ近づいてきた。
「これで全員でしょうか?」
そう言った(?)のは箱の形をしたロボットだった。直方体の上の方にモニターがついていて、二つの円が並んで映って目のように見える。
「ボクシーです。以後お見知り置きを」
「虎次郎です」
ボクシーは直方体の側面からニュルニュルと掃除機の延長部分のようなやわらかい筒状のものを伸ばし、俺に差し出した。握手ということだろうか。俺が手を出すと、その筒状の腕を俺の腕に絡めて揺らした。やはり握手で良かったらしい。
「虎次郎さんですか。その姿、地球人ですね」
次に俺にそう話しかけたのは、小さなフクロウだった。こちらは本当にただのフクロウのように見えるが、眼鏡をかけてそれを翼でくいくいと動かした。
「トリです。地球人が超次元内見に呼ばれる前列は聞いたことがありませんが、一体どのようなツテで?」
「超次元内見?」
「はて? ご存知でない?」
「皆様ようこそお越しくださいました」
トリの言葉を遮るようにして、大きな声が響いた。空から聞こえたその声に俺たちは反応し、一斉に上を向く。すると、ふわふわと何かが空から降りてきた。
「あれは……」
パンダだ。俺の家に来た熊と同じようにテンガロンハットを被ったパンダが、俺達のいるところまで、翼も何もないのにメリーポピンズよろしく、ふわふわと降りてきて、静かに着地した。
「この度は超次元内見へのお申し込み、ありがとうございました。あたくし、案内人のササクレーでございます。皆様のご要望にあったお部屋が見つかれば幸いです」
ササクレーと名乗ったパンダはテンガロンハットを脱ぎ、丁寧にお辞儀をすると、ニッコリと歯を見せて笑った。
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