「ドッジボールとコートの隅」の法則

笹 慎

最上級の忘却魔法は未だ見つからず

 私は基本的に学生時代の同級生たちとは、みな疎遠である。

 人の名前もあまり覚えられないので、誰一人としてフルネームを思い出せない。


 年賀状を頑なに「返さない」という戦法で絶滅を狙い続けているが、なぜか毎年いまだに2~3枚が実家に届く。大体、家族が増えている家族写真の年賀状だ。

 だが、私は頑なに返さない。


 別に特段、学生時代に同級生からイジメられていたといった記憶はないのだが、(日教組の思想強めな教師からはソイツが担任の間の数年間に渡り、陰湿なイジメを受けていたが「大人にもゴミがいる」とことを早いうちに知れて良かったのかもしれないと今は思っている)、羞恥心が非常に強くプライド高めな自分としては学生時代を振り返りたくないので、すべて「疎遠」という下位の忘却魔法でやり過ごしている。


 ここまで徹底しているのは、単に「連絡とったり面倒臭い」もあるのだが、とにかく運動神経が死んでいて、音楽的な才能も皆無だった私は「大縄跳び」だの「合唱」だのといったクラスで頑張る競技の足を引っ張る存在だった。


 ドッジボールやバスケットボールなどでチームを分ける際は、最後の最後まで残り運動神経の良いクラスメイトから「こいつ、どうするよ?」みたいな顔をされる人間だった。



 悪しきチームわけの慣習よ、滅べ!


 できないのにやらされ

 飛べず同級生に溜め息をつかれる

 大縄跳び


 できないのに歌わされ

 自分が音程ハズれているのかも判断つかない

 合唱会


 羞恥! なんたる羞恥!

 学びの場とは、子供の心に「恥」という名のスティグマを刻む場だ!

 滅ぶがよい!



 ……昔を思い出し、あまりの憤りについポエムをしたためてしまった……。


 まぁなんといいますか、学生時代というものは、学業の成績などという子供たちにとって面白くもないアドバンテージは同級生には評価されないわけで、端的にいって私は「イケてない側」の学生だったわけであります。

(いまの子は週刊少年ジャンプで連載していた『Dr.STONE』の影響で、多少は頭いい子も尊敬されるようだが……)


 そんなイケてない小学生だった笹慎。ドッジボールで謎の法則を見つけた出した。


 それは……


『コートの隅で体育座りしてると、だれもボールぶつけてこない』


 いや、わかるよ! 大人になった今ならね。なんでボールぶつけられないか!

「え? こいつ、ヤバ……」

 ってことだよ。わかってるよ、わかってる。今ならね!!


 だが、小学生の私はこの法則の真意を理解できずに、ドヤ顔で実行していた。なんなら数少ない友人たちにもドヤ顔で語っていた記憶さえある。


 でもさ、忘れてると思うじゃん? 他人のことなんかさ、忘れるじゃん?

 こっちは一切、同級生が当時どんなヘマしてたか、なんて覚えてないし。相手だって覚えてるわけないと思ってたんですよ!!


 ……成人式のあとの飲み会にて。


「当時さ、ドッジボールでお前のこと、ヤバい奴だと思ってた」


 そんな報告いらん。墓場まで持っていけや!!!


 余計なこと覚えてる奴っていますよね。その海馬で英単語の一つでも覚えろよ。同級生の恥ずかしい過去にストレージ使うな……。


 そんなわけで絶対に会いたくないです、同級生に。



 最後に。

 黒歴史としてこれを放出しようと書いていて思い出しましたが、普通にコートの隅で体育座りしててもドッジボールの球はぶつけられました。


 別になんの法則でもなかった……。


 ガハハ!

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「ドッジボールとコートの隅」の法則 笹 慎 @sasa_makoto_2022

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