プレッシャーに弱かった少年時代

逢坂 純(おうさかあつし)

プレッシャーに弱かった少年時代

幼い頃から、脆く儚げな程に繊細でプレッシャーに弱い子供でした。中学生の時には、入部していたバスケ部の顧問のコーチに「あつしはグシャッとなるから、怒れない」と言われ、他の部員にはガンガン怒っていた顧問が僕には、少しも怒らず、かと言って甘やかすわけでもなかったので、いつもチームは2軍入りでした。

この話は、そんなプレッシャーに弱かった少年時代のお話しです。

小学生の時の国語か社会の授業の中での、勉強の一環だったのだと思うのです。ある日の僕のクラスの授業で「自分の名前の由来を調べてくる」という宿題がありました。

そのような宿題を出されて、僕は母に、自分の名前の由来を聞きました。

すると母は言いました。

「あんたの名前はね、お父さんとお母さんが二人でちゃんと考えて付けただよ」と。

そうしてその日は、僕の名前がどうやってできたのか、そしてその名前の意味や、思いなども、母の口から長時間に渡って聞かされました。

そうして名前の由来の発表の授業の時を迎えました。

先生はクラスの中から順番に8人ずつ、黒板の前に並ぶように言いました。

僕は4番目の発表の順番でした。

一番目のクラスメイトに先生は言いました。

「じゃあ、名前の由来を発表してください」

クラスメイトは言いました。

「みちびき不動で付けてもらいました!」

みちびき不動?何だそれは!!と僕は思いました。

次のクラスメイトも言いました。

「みちびき不動で付けてもらいました!」

またみちびき不動?そしてその次のクラスメイトの彼も言ったのです。

「みちびき不動で付けてもらいました!」

僕はその時、頭が真っ白になりました。

「じゃあ、逢坂くん」

僕は口をパクパクさせながら、言いました。

「み、み、みちびき不動で付けてもらいました!!」と。

本当はちゃんと両親に考えて付けて貰った名前なのに~~!

その連鎖は僕だけでは止まりませんでした。

あと残りのクラスメイトたちは、僕を含め、これまでの生徒が言ったように、口を開ければ次々に言うのです。

「みちびき不動で付けてもらいました!」

「みちびき不動で付けてもらいました!」

「みちびき不動で付けてもらいました!」

嘘か誠か、前に並んだクラスメイトたちの『みちびき不動』の連鎖は止まりません。

僕は凄く思いました。

「みちびき不動って一体、何なんだーー!」と。

あれはもう小学校の高学年に差し掛かっていた頃のことだと思います。その頃からプレッシャーに弱い少年でした。そしてあの時、黒板の前に並んだクラスメイト達全員は、本当に自分の名前をみちびき不動で付けて貰ったのかも、未だに謎です。

みちびき不動という言葉も、僕にとってトラウマなので、ネット社会になった今でも、「みちびき不動」というワードの検索はしていません。

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プレッシャーに弱かった少年時代 逢坂 純(おうさかあつし) @ousaka0808

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