第2話 キミは女性の敵になったことはあるか!
あなたは、クラスの女子全員に取り囲まれて罵声を浴びたことはあるだろうか。
あなたは、女の子に泣かれ、女子全員に嫌われ、気持ち悪い目で見られ続けたことはあるだろうか。
これは、小学校のノリで中学校生活を過ごしたことで20年以上女性のちょっとした怖さすら感じることになった男の懺悔の記録である。
父親の転勤もあり、中学1年から全く見知らぬ土地へ引っ越し、人間関係をゼロから形成することになった。
人間関係をゼロから形成するのは、人見知りにはきつい。
酒が飲める今となれば、飲み会までひたすら大人しくして、飲み会で開放するやり方を見出し、おかげで良好な関係性は保てている。
ところが、そんな技があるなんて当然その時の自分は知らない。
だから、ただただ孤独な日々を過ごすことになる。
まだ1学期なのに、体育祭がある地域だった。
丸々1週間、授業も何もしないで体育祭の準備に費やすという、よくわからない1週間を過ごした。
今思い出すだけでも不愉快な1週間だったが、自分は応援団に入ることになった。
誰もやりたがらないからというのが一番で、お前がやれよという視線を感じた。
ただ小学校時代に応援団をやったことがあり、まぁいいかとも思った。
やってみたら楽しく、なんだかんだで応援団の時は楽しくやれた。ある時までは。
応援団は各クラス男女3人ずつが参加する。
女の子も3人同じクラスから参加した。
その中の1人にサトミという女の子がいた。
このサトミはこの時期特有の、「男よりも先に成長してまっせ」的な雰囲気を醸し出していた。
自分なんかは子供丸出し、「いつまでも子供でいたいっす!」が出ていたように思う。
それでもサトミとフレンドリーに話せて、中1のスタート時の地獄はどこへやらといったところだった。
応援団の練習が終わり、片づけをしているころ、サトミやその友人などが誰のことが好きかという話をしていた。
自分はスズキさんという子が好きで、色々感想を言い合う感じになった。
サトミはユウキという男の子が好きなことを知る。
「そうなんだ、サトミちゃんはユウキくんのことが好きなんだ。」
その輪に入っていなかったサトミの友人であるナナコが自分に声をかけてきた。
「ねぇ、何の話してたの?」
「みんなで誰が好きなのかという話をしてた」
「そうなんだ、ちょっと教えてよ」
「サトミちゃんはね、ユウキくんのことが好きなんだって」
「へぇ~そうなんだ~」
高揚感にも似た気分になっていた自分がそこにいた。
幸せそうな表情で奈落に落ちていったことも知らずに。
24年前の記憶は今も鮮明に残っている。
それはナナコにサトミの好きな人をバラした翌朝のことだった。
自分の机を取り囲むように、女子が何人も立っていた。
自分の姿を見かけると、不良少女のごとく、女子がつかみかかってきた。
「おまえ、サトミに最低なことしてくれたね。」
この言葉で、全てを察した。
そりゃ友人なんだもん、あのバカあんたの秘密バラしてたよって言うよな。
サトミは机に突っ伏し、号泣していた。
この時、自分はそのクラス、いや、学年の半数以上の女性の敵になった。
男は誰も助けてくれない。
あれだけ話してくれてた男の子が、な~んも話してくれない。
その日から、嫌がらせが始まっていった。
スクールカーストの中でも最下層へ、最下層の最下層へ。
そこらへんの不良がホームレスに暴力をふるってその対応を笑うかのごとく。
自分は中学の3年間、人間の嫌な部分しか見ることができなかった。
それは身から出た錆であることもわかっている。
自業自得であることも知っている。
そして、これ以外にも自分は数々の選択ミスをしたことも理解している。
そう、この失態は単なる助走に過ぎない。
36年過ごした今、こんな状況になったのは、致命的なミスを中学時代にし続けたからだ。
もしもこの時をやり直せるのであれば。
そもそも応援団には入っていなかった。
モー娘。が流行ってたので、中1の自分が中3の先輩にモー娘。を取り入れましょう的な進言をしていたが、それもしなかっただろう。
「先輩後輩なんて必要ないですよ」、そんなことも言ってたが言わなかっただろう。
秩序の中に入る覚悟がその時の自分にはなかった。
まぁ今も秩序の中に入る覚悟なんかないのだが。
秩序の中に入る覚悟がある人間だけが世間が想像する幸せを手にできる。
それを中1で気が付いていれば、自分は秩序の中に入る覚悟を何とかして持てたかもしれない。
部活選びでも自分は大きな失敗をすることになる。
生まれた時からやり直したい。 たろっち @tarotti
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