生まれた時からやり直したい。

たろっち

第1話 35歳で目の前に死を突きつけられた男

遺書を書いた経験は後にも先にも35歳のあの時だけだった。


様々なツールのパスワード、銀行口座の暗証番号…すべてを書き記し、その日に命が尽きてもいいように準備を整えた。


遺書を書いていた時、自分は人生を振り返り、全力で後悔し、人生に絶望した。


目の前に死を突きつけられるなんて思いもよらなかった。




「血圧130を超えたらトクホの胡麻麦茶!」そんな謳い文句の胡麻麦茶がある。


その血圧は上が130の場合を指す。


自分は血圧200前後、下が130を超えていた。


わが目を疑うとはこのことだった。


前兆はあった。


起立性低血圧のような症状がここ1か月以上続いていた。


色々な策を講じてもなかなか起立性低血圧の症状が治まらない。


「なんだ、自分って低血圧だったのか」


ネットで調べた情報を見てそう思った。


たまたま家に血圧計があったので、測ってみることにした。


血圧が200近くあった。


高血圧が原因で脳内出血などを起こすケースはよく聞いた。


ミュージシャンがライブ中に脳内出血を起こして亡くなったニュースは他人ごとではなかった。


自分は死の手前にいることをこの時悟った。


そして、精密検査を受けると、思いもよらぬ検査結果を突きつけられた。


35歳にして教育入院レベルの糖尿病になっていた。


ヘモグロビンa1cという数値があるが、9.5%前後。


5.8%からが正常値オーバーであり、その数値は一発アウト。


何から何まで一発アウト、いつ死んでもおかしくない。



正直、死を意識し、もう死にたいという気持ちになった。


やり残したことはありすぎた。


でも、生きる気力がその時の自分にはほとんどなかった。


死にたい、消えたいという気持ちは昔からちょくちょく出てくる。


学校が嫌いだったし、社会人になってもきつかった。


誰のことも信じられないし、最後は自分が可愛いんだろうと人間の嫌な部分ばかりが目についてしまう。


一時期、精神疾患になり、いわゆる精神安定剤などを服用していた。


あの手の薬の中には意欲を失わせるようなものもある。


あれを飲んでから、自分は色んな意欲が失われ、人生を諦めるようになったと思う。


幸い、精神疾患の薬は10年以上前に服用していないが、あの時の経験は今でも忘れない。


クスリは怖い。




重度の糖尿病と高血圧。


それがどうしたものか、1年後の今、糖尿病の薬は全く飲んでいない。


85キロあった体重は65キロまで落ちた。


血圧200だった中、110台まで落ちた。


ヘモグロビンa1cは5.6%まで下がった。


そう、色々と努力し、医者に褒められるくらい、治療を頑張った。


遺書を書いた、もう死んでもいい、もう消えたい、そこからなぜ復活できたのか。


それは自分にもわからない。


ただ、不必要な寝酒、寝る直前の食事、腹いっぱい食べるつけ麺、胃に詰め込むだけ詰め込む炭水化物。


色々と疑問を持ちつつ是正できない自分が嫌いだったのかもしれない。


あと毎日スクワットをし、1000回以上のスクワットをする日もある。


毎日8000歩以上歩くようにした。


後悔や反省は尽きない、自分の人生は失敗だらけだったと思う。


それでもなぜ前を向くのか。それは自分にもわからない。


自分で死ぬことにも疑問があるのかもしれない。


というより、何の決断もできないようなクズなのだ。


できることは、過去にあったことを記すのみ。


何話になるかはわからないが、自分の後悔と反省、懺悔にお付き合いいただきたい。


下には下がいる。


自分は底ではないんだと思えると、人は妙な安心感が出てくる。


そんな感じでお読みいただきたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る