芋女が転生したら美少女になったので、この世界を平和にしようと思います!

ささみわさび

第1話 転生

「へへへ……これはいいものが描けそうだな〜」


青光りの画面に向かいながら、ペンを走らせる。

この創作の時間は、私にとってなくてはならない時間の一つになっていた。


いつの間にか時計の針は夜中の2時をさしていた。


「こんな時間かぁ…明日のためにもそろそろ寝るかぁ」


電源を切り、黒い画面に自分の姿が映る。

何もケアされていないボサボサの髪に、化粧っ気の無い顔。これでは彼氏ができないのも、頷ける。

別に、恋人とか今はいらない。そう言い続けてあっという間に23歳だ。親も親戚も焦らせてくるけど、自分が1番焦っている。


「…早く寝よ」


嫌な現実から逃げるように、布団の中へ潜り込む。

仕事の疲れもあってすぐ睡魔が襲ってきた。


「起きたら可愛くなってないかなぁ…」


そのままゆっくりと眠りについた。




「んん……何めっちゃ寒い…」


一面の花の中で目が覚めた。

おかしい。昨日私は東京の自分の家のベットで寝たはず。

そもそもうちの近くにこんな花畑はない。


「待ってここどこ!?」


思わず叫ぶと、近くからグルルル…といううめき声というか動物の唸り声が聞こえた。

私の見間違いじゃなければ、私の前からオオカミのような獣が迫ってくる、それも全速力で。


「これ夢だよね…?」

半泣き状態で祈るような気持ちで口に出した瞬間


「なにしてる!!」


目の前に現れたその人は物の一瞬で、その獣を倒してしまった。


「危なかった……。大丈夫ですか?こんなところでそんな格好してたら、食べてくださいと言っているような物ですよ」


ついさっきここへ来たばかりだから、そんな常識知らなすぎる。

恐怖で震えながらもお礼を伝えなければと必死に声を振り絞る。


「あの、助けてくれてありがとう、ございます。あなたは?」



「私はシャムといいます。この辺りを最近ウルフが縄張りにしていると報告を受けて、見回りに来たんです」


先ほどまでは気づかなかったけど、すごく綺麗なブロンドカラーで、顔立ちもなんというか、西洋の良いところだけ集めた美少年といった感じだ。


「シャムさん…。本当にありがとうございます。あの、ここってどんな世界なのでしょうか?」


その質問に怪奇そうな顔をするシャムさんに、持ちうる語彙の限りでたった今全く違う世界から来たことを説明した。


「にわかには信じ難いですが…、嘘を言っているようには見えないですね…。

ここは、シカキ王国という、まあ…比較的平和な国です。魔物に侵略されつつありますが」



「えっ…魔物ってあのファンタジーとかにある…?」


「そのファンタジーがよく分かりませんが、魔物の長を倒すため、国を挙げた討伐隊での大きな魔物駆除が行われています」


そうかここではファンタジーという概念がないのか…。

確かに駆除がされているのなら、そこまで殺伐とはしていないのかもしれない。


「ところで、今後どうされるおつもりなのですか?」


今後…そんなこと微塵も考えていなかった。確かに、このまま元の世界に戻れなければ、最悪ここで野宿だ。


「戻れなかったらここで野宿…ですかね」


シャムさんの冷ややかな視線が刺さる。



「本気で言っているのなら、一度川の水に頭をつけてくることをお勧めします。先程のことをもうお忘れですか。ここで野宿などすれば、明日の朝には骨になっているかもしれませんね」



綺麗な顔で恐ろしいことを言う人だ。半泣きになりながら明日の朝はとりあえず生きたまま迎えたいと懇願した。



「はぁ、仕方ありませんね。その様子だとお金もないのでしょう、私の家に案内しますから絶対にはぐれないようついてきてください」



「はい…ありがとうございます…」


申し訳なさと少しの恐怖心の中、言われた通りはぐれないようついていくことにした。



ついた先は_______________

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