春とバーベキュー

5月の半ば、学校では勉強しかすることがなくて退屈していた。そんな中、、

ついに!待ちに待ったこの日が来た!!


「糸井、ついに遠足だよ!」

私はキラキラした目で隣の席の糸井に話しかける。遠足、といっても歩くのよりバーベキューがメインなので目的地へはバスで行く。

今はそのバスが待つバス停のある駅へと向かう電車の中、

つまりまだ何も始まっていないところだ。


今日は集合時間が早いうえに、糸井は家が遠いのでほぼ睡眠時間がなかったのだろう。

「ぬぁんですか、、」

と眠そうな声で答えてきたのがツボで思わず笑ってしまった。

そのせいで糸井にはうるさいと注意された。寝たいのだろう、寝させてあげよう。


***

「あ、茜ちゃん、おはよう」

「おはよ~はやいね」

私がバスに乗った時、せっかちな三笠さんはもう既にバス席に座って神木さん、松野さんと喋っていた。

ついた人から座るシステムなのである。まだ10人ぐらいしか来てないけど、、。

「ふにゃ、、」

なぜか糸井も三笠さんに答える、寝ぼけてたらかわいいなこいつ。

「「おはよう、茜ちゃん」」

「え、お、おはよう、、?」

まさか神木さんと松野さんにも言われるとは思っていなくて面食らった。


バスが発進した。

後ろで糸井は三島の隣でアイマスクをしてバスレクなんか無視して本格的に寝ているし、

七瀬も私の隣ですっかり眠っている。

前の三笠さんと羽生、、

(そうそう、なぜか班ごとに席の位置が決まっていてうちの班の1人と三笠さんやれもんちゃんの班の1人が隣同士にならないといけない、という感じだったのだが結局こうなった。)

は意外に話がはずんでいるようだ。

幼馴染?という言葉が聞こえてきたがよく聞こえない、、視線には敏感で勘はいいのに耳が悪いな。


はぁ、、暇だなぁと思っていると糸井が起きて、唐突に言ってきた。

「ねぇ和達さんばっきーげーむしない??」

「ばっ、ばっきーげーむ!??」

結構大きめな声で糸井が言ったので隣の七瀬も飛び起きたし周りもざわつき三島は引きつり笑いをしている。

「何あんた寝ぼけてんの」

「いや、BIGサイズならよくない??」

「よくないよ、絶対やだ」

なーんだ、そんな感じで周りがほっとする。

たく、何考えてんだ糸井のあほは、、そう思いながら前を向きなおすとばちっと三笠さんと目が合った。

いつも三角形でクールビューティーな目が思い切りまんまるに見開かれていてちょっと面食らった。

が、それもつかの間彼女はまた前を向きなおした。

***


「ついた~!!」

「広いね、ここで食材調達するんだ」

まずショッピングモールでバーベキューの具材を班ごとに買ってから隣のバーベキューコートへ移動する。私たちの班はやはりカオスなメンツなのでカオスな食材ばかりになった。

「ねえみてみてあかねるー!!とんかつ用の肉!!よくない??」

「ばっきー抹茶味あるじゃん!!これ溶かしてマシュマロにつけて食べようよ!!デザートにさ」

「このお肉、、いいじゃん」

七瀬、三島、糸井の3人が思い思いに食材をカートに突っ込むのでちょっと不安になって唯一普通な羽生に食材選別の助けを求めたが、まぁいいんじゃね??とあっさり言われてしまった。

ということで、、そのままカオスな食材に決定した。


だが、そのつけが回ってきてしまった。

バーベキューでとんかつとか聞いたことないぞ、、と思ったが、とんかつは意外に良かった。

抹茶味のマシュマロも見た目は、、溶けたばっきーが美味しそうに見えなかったものの、

ちゃんと美味しかった。

問題は糸井の買ったお肉だった。食べるとあまりにも硬くて嚙み切れない。こんな硬いお肉食べたことがない!!なんだこれは、、疑いつつパッケージを見ると、、なんと、そのお肉は煮込み用だった。

「そりゃ食べられないわあほ!!!」と糸井に言うと

彼は牛のようにもぐもぐ反芻しながら(少し可愛かった、、)

「頑張れば食べれますよ」

とか言ってて呆れてしまった。やはり糸井はどこかおかしいと思う。


***

「いや、、にしても食べすぎたね、、酔うかも~」そういいながら七瀬が苦笑いをする。

「一応ビニール袋持ってきてるから酔ったら言ってね七瀬、、」

帰りのバスに乗っても、私たちのテンションは下がらない。帰るまでが遠足とはまさにそういうことだ。

「うん、わかった、、」

七瀬はうつむいた。冗談抜きで少し気分が悪そうだ。

「気分悪いなら少し寝る??」

「え、で、でも、、」

「どうしたの??」

「寄りかかっちゃうかも、、」

「別にいいよ、ゆっくり休みな」

そう私が言うと

「じゃ、、じゃあ、、おじゃまします」

と言ってちょっともじもじしながら七瀬がとん、と私の肩にもたれてきた。

「ちょっと恥ずかしいなこれ、、」

「そ、そうだね、、えへへ、、」

彼女がいつもよりも明らかに落ち着いていて、、少し動揺したがたぶん気分が悪いからだろう。

私たちを乗せたバスはまた、いつもの日常へと引きかえしていく。



***

このまま、、もう少しだけ、、いいよね、、

気分が悪いのはほんとだ。でもまさか肩を借りれるなんて思ってなくて、、

心臓がうるさい。なんでそんな優しいの??あかねるのばか。

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恋はできないはずだった れいおん @reion-0206

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