ごめんね神木さん
「やぁ君、今日は遠足の班決めの日だよ」
ドアを開けた瞬間レモンちゃんに話しかけられた。
「え、!レモンちゃんから話しかけにくるとは結構珍しい、、朝なのに」
レモンちゃんの朝は早い。
なんせ家が遠すぎる。
ギリギリ通学範囲だが。
ちなみに糸井も遠いし、七瀬はわざわざおばあちゃんの家から通ってる。それでも遠い。
その中でも飛び抜けて遠いため、早く起きないといけなくて苦労しているらしい。
だからレモンちゃんは朝私が登校した時、9割は机に突っ伏して寝ているのだ。
そんなレモンちゃんが起きてわざわざ私に話しかけに来ている。
まさか、、
「一緒の班にならないかい?」
「あぁぁぁ」
私は叫びながらしゃがみこんだ。
朝は騒がしいのであまり目立っていない。
「え?え?どうしたんだい?」
「悪いぃぃレモンちゃんよぉぉぉ‥」
「怖い怖い」
お化けみたいな声になってしまった。
「‥‥申し訳ない、先約がっ」
謝罪文をいいかけたところで
「あっかねーーーるはっろーーーーー!!」
「うぎゃっ」
テンションが高いかつ空気の読めない七瀬にどっと右からどつかれ倒れかける。
「…七瀬、少しは空気を読みなさい」
「ひっあかねる怖いよぉ」
なんだ?今日の私は怖いのか?
「あぁ‥もしかして先約って天野さんかい?」
「そうなんだよね、ごめんね檸檬ちゃん」
「ええよええよ~違うクラスの子と組むし」
檸檬ちゃんには美術部つながりの友達が何人かいる。
だがこのクラスの友達は私以外だと
荻野 真城
(可愛い名前だが糸井とか羽生君と仲のいい男子)
ぐらいだろう。
‥申し訳ない事をした。
去年は一緒の班だったのに。
彼女はなんともないような顔で続けた。
「で、あとのメンツは誰なんだい?5人班なはず」
「えっとね‥糸井と三島と‥」
あと羽生君、といいかけた時に
「おい和達さん聞いてくれっ!!」
「和達さん、大ニュースだ!」
とまたもや三島と糸井に邪魔をされた。
「ちょっとは‥空気を読みなさい…」
「えっ、ご、ごめんなさい‥」
「あんたらねぇ‥」
糸井も三島もあと七瀬も怖がっている。
私は怒ると怖いのだろうか、?自分を客観視できる能力があったら確かめられるのだが。
「で、大ニュースって何?」
「それが‥羽生が‥学校に来たっ!!」
三島が叫び、打ち合わせていたのか、
三島と糸井が同時に教室のドアの前からさっと避ける。
教室の外には、、身体測定の日からほぼ2週間ずっと来ていなかった羽生 昂輝がいた。
「ご無沙汰してます〜」
のほほんとした口調で話すのは私の幼馴染の1人でもある羽生 昂輝だ。彼はゆるくて優しいのでいろんな男子からよく慕われている。
「羽生、大丈夫なの‥?起きれたの?」
「奇跡的に起きれたからここにいる」
彼は起立性調整障害でうまく朝起きれないのだ。
遅刻や不登校はそのせいだ。
仕方ないとは分かっているのだが‥
寂しかったよ!!私の癒し3人目!!
そう、何を隠そう、
彼ーー羽生 昂輝ーーは私の癒やしの1人なのだ。
「羽生、!久しぶりだな!」
「羽生ーあいたかったぞ!」
相川君やテニス部の藤堂君、荻野君、違うクラスから遊びに来ていた川口君が集まってきた。
「羽生、人気者だね、よく私の班に入ってくれたもんだよ」
うむ、流石我が癒やし、実は優しくてゆるいだけじゃなくて数学も得意で数オリにも出てたんだよね、
流石、内部生の鏡ーーーー
脳内で癒やしを語っていると
「あ、もう1人って羽生君なのかぁ」
檸檬ちゃんが話しかけてきた。
すっかり誰と話していたのか忘れていた。
本当に申し訳ない、もう1人の癒やしよ!
「檸檬ちゃん、具体的には誰と組む予定‥?」
「んー彩ちゃんと佐幌ちゃんと恋夏ちゃんと‥
んー‥そこに君を誘おうと思っていたんだが‥」
「じゃあ、あともう1人?」
「、、困ったなぁ、あ、そうだ」
羽生の周りに集まった男子をうまく避けてとことこと教室内を歩き出す。私もそれについていく。
(こういう時に小柄だと役に立つのかもしれない。)
どうやら他クラスに行く訳ではなさそうだ。
誰かあてがあるのか‥?荻野君じゃないのに?
ぴたっと彼女がある人の机の前で止まった。
私は思わず目を見開いた。
「三笠さん、うちの班に入らない?」
「え、私?」
勉強していた手を止めてぱちぱちと瞬きをする。
「うん、恋夏ちゃんと彩ちゃんと一緒によく研究したりしてるじゃん?生物同好会も入ってるしさ」
そんな場所に繋がりがあったのか、!
私は三島に左手の親指を立てて合図した。
彼はコクリと頷きすぐにノートのありかである研究室へノートを取りに帰るため引き返した。
これもブラックノートに加えてもらおう。
そろそろ2冊目が必要になる気がするな。
「そうだなぁ、まだ決まってないしそうしようかな」
三笠さんはちらっと上目遣いのような感じで私の方を見た後、そう答えた。
私は何度も言うが、人の視線に敏感だ。
さては、少し勘違いしているな、と視線から気づいた。
「あ、私は違うからね」
私も同じ班だと思われている気がしたので付け加えておいた。
「え、あ、、」
やはり、勘違いしていたのか。
間髪入れずレモンちゃんが
「もう1人は佐幌ちゃんね、紹介するわ、B組いこー」
と言って戸惑っておどおどしている三笠さんをそそくさと連行していった。
「レモンちゃん手際ええなぁ、、」
私は彩ちゃんとは1年生の時同じクラスで合宿も同じ部屋だったため接点があるのだが、
佐幌ちゃんと恋夏ちゃんとは接点がない。
レモンちゃんからよく名前は聞くがどんな子なのだろう。
私も会いに行ってもよかったのだが面倒くさかったので行くのをやめて、
自分の机へと戻ろうとした。
その時だった。
「ねぇ」
「え」
少し高めの可愛い声で話しかけられた。
振り向くと見覚えはあるがあまり接点のない女子がいた。
「あ、はじめまして、神木莉音です」
名前の響きがいい。あと声も素敵だし顔も可愛い。
もてそうだなという第一印象だった。
「えっと、私は和達 茜です、えーと、、ご用件をうかがっても?」
「うん、えっとね、その席の人がどこにいるか知らないかなって」
その席の人、、あぁ三笠さんのことか。
「彼女なられも、、長谷川さんとB組に行ったよ」
「え、、B組の人と組むのかな、遠足の班」
少し顔が暗い。
「長谷川さんたちのグループに入るらしいよ」
私が教えるともっと暗くなった。
顔に気持ちがよく出る子らしい。
一緒に組みたかったのだろう。
「でも、、長谷川さんとあんまり仲良くない気がするけど」
落ち込んでいるのを見て居ても立っても居られなかった。
「、、ごめん!!」
「え?どういうこと、、?」
「私のせいかも」
申し訳なくなり、三笠さんが長谷川さんと組むことになった経緯を伝えた。
私が長谷川さんのグループに入っていたら、この子は三笠さんと組めただろうに。
彼女の顔はどんどん曇っていった。
すべて話し終えた後彼女はぽつりとつぶやいた。
「そっか」
そういって一言。
「氷河に友達ができてよかった」
彼女の笑顔は、少しひきつっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます