第36章 お母さんの日
第141話 5つのプレゼント
Side:エイタ
僕はエイタ5歳。
お父さんは商人で、僕はこれでも商人の卵さ。
明日はお母さんの日。
プレゼントをどうしよう。
近所に住む、ワウンドーラと相談することにした。
「何が良いかな?」
「わたし去年はお花を贈った」
花か。
店で買うとか野原で摘んで来るとか色々と考えられる。
女性は花を貰うと嬉しいらしいけど、商品として考えるとありきたりだ。
びっくり感がない。
となると手作りの品だけど、何が良いだろう。
「今年は手作りの品で行きたいな」
「それ良い。良いよ、とっても良い」
まず最初に考えたのはアクセサリー。
「木の実に穴を開けて首飾りは?」
「貧乏くさい。おままごとなら良いけど」
木の実のアクセサリーはワウンドーラは好きじゃないみたいだ。
「じゃあ、ワウンドーラは何が良いの?」
「そうね。畑で集めた綺麗な石の首飾りなら良いわ」
「石に穴を開けるのは大変そう」
「釘にトンカチじゃ駄目かな」
「やってみよう」
試しの石は綺麗ではないただの白い石。
地面に置いて、釘を当てて、トンカチで叩いた。
石が跳んで行く。
固定しないと駄目かな。
石を少し地面に埋めた。
そしてトンカチで叩いた。
「痛っ」
手を叩いてしまった。
「ぷきっちょね」
ワウンドーラと交代した。
「えい」
釘が石から外れ地面に突き刺さった。
「難しいね」
「ええ、道具がないと無理みたい」
「石の首飾りは諦めよう」
「いいえ、穴を開けるんじゃなくて、針金で固定したら」
「うん、やってみよう」
石に針金を巻いて、糸に通せるようにしようとした。
「くっ、針金が堅くて。痛っ、針金を刺した」
「貸してみなさい」
ワウンドーラがやるも。
上手く行かない。
工具を上手く使わないとだけど、ペンチの握りは大きくて、大人じゃないと無理だ。
もっと細くて柔らかい針金があれば良いんだけど、そういうのはなかった。
「針金ではなくて糸にしましょう」
ワウンドーラの提案で石に糸を巻く。
石の綺麗さが見えるように、3回ぐらい巻いたのでは簡単に外れてしまう。
それに不細工だ。
「なんか思ってたのと違う」
「そうね」
「石のアクセサリーをやめない」
「じゃあどんなのが良いのよ」
「ええと木彫りに糸を付けたペンダントとか」
「刃物は危ないわよ」
うーん、危なくない方法で木を削るか。
「お父さんの知恵を借りよう」
「ええ」
「お父さん、刃物を使わないで木を削りたい。お母さんへのプレゼントを作るんだ」
「ヤスリとか砥石で削るんだな」
「分かった」
ヤスリで木の破片を削る。
根気のいる作業だ。
「あっ、削り過ぎた。ぐすっ、上手く行かない」
「泣くと子供だと思われるわよ」
なんとかできた木の細工は不格好だ。
ワウンドーラのも同じ。
「駄目。こんなのじゃ、仕上げしたくない」
「不格好なのは認めるわ。いちおう仕上げして次にいきましょう」
「放り出したいけどやる」
「そうね、仕事は手を付けたら最後までしないと」
木の細工物が出来上がった。
猫を作ったはずだけど、猫か熊かネズミか分からない物になった。
「次は何を作ろう?」
「組紐なんかどうかしら」
「組紐なら危なくないね」
「ええ」
道具をお母さんに借りようと思ったら。
「駄目よ。組紐用の糸は高いんだから、子供の遊びには使わせられないわ」
どうやら駄目らしい。
ワウンドーラの家も同じだった。
お小遣いでは組紐を作るだけの糸は買えない。
「どうしよう?」
「私達ができることって少ないわね」
「うん。でも何か作らないと」
「もう考えつかないわ」
「僕も」
さあ、困ったぞ。
あの不細工な木の細工で良いのかな。
男は簡単に諦めるな。
お父さんの教えだ。
お金を使わないで見映えのする物。
やっぱり、野原で花を摘んで来るしかないのかな。
「一応花も摘んでこよう」
「ええ」
ワウンドーラと花畑に行き、花を摘む。
雑草の花はなんという貧乏な感じ。
恰好良くない。
特別な日でなければこれでも良いんだけど。
ワウンドーラが花冠を作り始めた。
僕も真似して作る。
これで3つできた。
3つあれば不格好でも良いような気がしてきた。
「いや、駄目だ妥協する奴はそこまでの奴だとお父さんが言ってた」
「ええ、目標は高くって私も言われた」
「次は何を作ろう?」
「かごなら作れる。柔らかい蔓で作れば良いんだから」
刃物は危ないけど蔓を採る許可は下りた。
蔓でかごを編む。
不格好なかごが出来上がった。
硬い蔓でないので、何日も経つと駄目になるかも知れないけど、とりあえず1品になった。
4は数が悪いのでもうひとつ作りたい。
「端切れならあるから、小さい袋を作ろう」
「ええ、良いかも」
ワウンドーラに教わりながら小袋を作る。
これは結構大変だ。
縫い目がジグザクでやっぱり不格好。
辛うじて物が入っても零れない物が出来上がった。
今まで作った作品を見る。
「うーん、どれも良くないね」
「でもこういうのは気持ちよ」
「そうなんだけど」
店に売っているような品物はできない。
3流の職人の物にも遥かに及ばない。
精一杯やったという感じはあるんだけど。
何か違う。
ネティブお兄さんに相談してみようかな。
不思議な品を持っていかないと。
不思議な品が埋まっているというワウンドーラの家の畑に行く。
小さいシャベルで畑を掘る。
なかなか出て来ない。
そして、遂に見つけた。
両端が黒い棒。
長さは手の平ふたつ分。
太さは小指の半分ぐらいかな。
真ん中は透明だ。
その透明な部分の中に黒い線みたいな物が見えた。
何の道具だろう。
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