第115話 裁判
Side:ネティブ
「裁判を始める。訴えによると、ここにいるプランツとネティブは邪教の教えを広めたということ、被告人は罪を認めるか」
「認めない」
「認めません」
「ふむ。無実だという証拠は」
「配ったビラに書いてある通りです。この大地が丸くないと説明がつかない。他に証拠もあります。提出した嘘判別魔道具に教会の者を掛けて下さい。かれらも地球が丸いと思っているはずです」
俺の訴えで何人もの神官が地球は丸いと思っていた。
でないとビラの図が説明付かないからだ。
神官は学のある者が多い。
上の者の思惑はともかく、理論立てて言われると反論ができない。
事実だからだ。
「陰謀だ!」
狂信者みたいな神官が、反論にもなってないことを言う。
「では証拠を出しなさい」
ナイス、裁判官。
「ぐぬぬ。神書に書かれているこれ以外になんの証拠が必要なのか」
「私も神書は読んでいる。だが地面が平らだという記述はない。神が手をかざすと地面が出現し広がったとあるだけだ」
「平面状に広がったのだ。無限に広がったに違いない。神のなされることに限などというものはない」
「証拠は?」
「神の力が有限だとでもいうのか」
「創造物である人間は不完全です。これは神の力に限界がある証拠では」
「この不信人者め」
「証拠がないのなら黙っていなさい」
裁判が進み判決が出た。
無罪だ。
裁判官は腐ってないようだ。
教会と国が上手く行ってないというのは本当の事だったんだな。
表立って反目はしてないが、国王が教会を疎ましく思っていると聞いた。
地球は丸いと国が認めたことになった。
それから聞こえてきた噂では裁判の判決を聞いて王は祝杯を上げたという。
商会の方は大丈夫だった。
首にならなくて良かったよ。
会頭が、商人は裁判沙汰などよくある事だから、有罪になるまで首にするなと言ってくれたおかげだ。
教会はビラに書かれたことの反論するための理論をなんとか構築しようと躍起になっているらしい。
だが思いつかないらしい。
しばらくして、ほとぼりが冷めたのでプランツさんと祝杯を上げる。
「助かったよ」
「僕が思うに学説を唱えたぐらいで逮捕されるのはおかしい。だから無罪は当然だ。たとえ学説が間違っていたとしてもね」
「奴らには神書しかないのさ。上の方だって、疑問は覚えているが、神書を否定したら教会が成り立たない」
なんか忘れている気が。
ああっ、エイタとワウンドーラだ。
星を取れるようにしないと。
磁石を使ってしまったから言い訳ができない。
「困った。子供達を僕が騙したことになる」
「星は取れないが、模型なら手に取れるぞ。ひとつやろうか」
そうか、その手があったか。
本物じゃなくても良い、幻影でも良いんだ。
そう言えばとポケットを探ると磁石がもうひとつ残ってた。
祝杯を挙げた後、いい気分でシナグル工房の扉を潜る。
「いらっしゃい」
「いらっしゃい。お酒臭い」
シナグルと女の子が迎えてくれた。
「星の偽物がほしい。幻影で良いんだ。お代はこれだ」
ぐにゃぐにゃ曲がる磁石を差し出した。
「何、これ。ふにゃふにゃしてる」
女の子が磁石で遊んでる。
「磁石だよ。鉄のくっ付くんだ。スイータリアにあげるよ」
「シナグル、ありがとう」
「よし。幻の星だな。これが良いか。ララーラーラ♪ララーララ♪ララー♪ラーラ♪ラ♪ラー♪ララー♪ララーラ♪ララ♪ラララー♪ラーラー♪。プラネタリウムだ」
シナグルが核石を作って宝石箱ほどの台座にはめ込んだ。
溜石と導線を付けて完成だ。
「使っても」
「もちろん」
窓を閉めて、魔道具を起動すると天井と壁が星空になった。
「綺麗。私も欲しい」
「後で、ソルとマギナとピュアンナにも持っていけ、マニーマインには来た時に俺が渡す」
これで満足してくれるかな。
もし駄目なら謝ろう。
この商品はシナグル工房に100個注文してから帰った。
きっと高値で売れるだろう。
夜のナイトスタンドにちょうど良い。
夜、エイタとワウンドーラのもとに。
「お兄さん、ありがとう。さっそく使うね」
エイタが魔道具を起動する。
「わぁ、星が一杯」
「少しずつ動くんだぞ」
「そうなの」
「夜空の星も少しずつ動くんだ」
「知らなかった」
エイタは喜んでくれた。
次はワウンドーラだ。
「綺麗、部屋が星空模様」
ワウンドーラも喜んでくれている。
手で光を遮ったりして遊び始めた。
「どう?」
「お星さまって取れないものなのね」
「まあそうだな」
「でも綺麗」
ワウンドーラも満足してくれた。
プラネタリウムは売れに売れた。
追加でもう100個、発注したぐらいだ。
プラネタリウムの星はゆっくりと動く。
こんな所もかなり凝っている。
眺めていると飽きない。
眠るまでの僅かな時間の癒しとしてちょうど良い。
今回、僕がこんなに突っ張ったのは、プランツさんの信念に感動したからだ。
僕なら表面上は地面は平らだと言い逃れをするかも知れない。
信念を曲げないということを教わった気がする。
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