第91話 ピュアンナとマニーマイン
Side:ピュアンナ
恋愛同盟に加入しました。
私は一番不利なのかなと思います。
だって、シナグルさんとは、仕事上の付き合いしかしてない。
物凄い宝物の神のコインを貰った。
アクセサリーにしたいとか考えていたら、女が現れた。
こいつ、たしか冒険者だったはず。
でもシナグルを見る目つきが、同業者を見る目つきじゃない。
恋心が溢れている。
関係を聞いたら幼馴染。
排除したいけど、シナグルが気を悪くしそう。
強敵ね。
「マニーマインさん、シナグルと結ばれたいとか思ってます?」
シナグル工房の奥の部屋で問い詰めてみた。
「私奴隷だから無理」
いいえ、騙されないわ。
こういう障害は多いほどに恋は燃えるのよ。
シナグルの財力なら奴隷からの解放なんて容易い。
「恋愛同盟に加入しませんか」
これしか手がないみたいね。
「私もしていいの」
「もちろん、シナグルを愛していれば問題ありません」
「入る」
他の3人と話合ったら、マニーマインの加入は認められた。
シナグルとマニーマインは過去に何かあったみたいだけど、聞くのが怖い。
どりあえず、これでよしとしておきましょう。
神のコインはブレスレットに取り付けた。
これを身に着けると、仕事を頑張れる気がする。
勇気が出た。
よし、マニーマインさんとの関係をシナグルに聞いてみよう。
「シナグルさんはマニーマインさんをどう思ってます?」
店での見張りの時に聞いてみた。
「マニーマインとは初恋だったんだよ。でもそれは恋じゃなかった。憧れだったんだよ。マニーマインの強さに憧れただけだった」
「恋愛感情はなかったと」
「昔はあったかも知れないけど、今は100%ないな」
よっし、心の中でガッツポーズした。
「私は?」
「ギルド職員との恋愛は魔道具職人にとって禁忌だ」
それがあったわ。
「ギルドならいつでも辞めれます」
「聞かなかったことにするよ。グリフォンの羽ペンの想いを忘れたピュアンナは見たくない」
くっ、失言ね。
魔道具を広めるという目標はあなたと結ばれるのなら諦めても良いなんて言ったらたぶん軽蔑される。
それは不味い。
マニーマインさんの障害も凄いけど、私の障害の方が凄いのでは。
障害があるほど恋は燃えるというけど、シナグルにそんな感じはない。
困ったわね。
ギルド辞めるというと軽蔑されるし、かと言って職員のままだと結ばれない。
マギナさんとソルさんが羨ましい。
他人の芝を青く見えるというけどみんな同じなのでしょうか。
Side:マニーマイン
恋愛同盟に加入することになった。
これでシナグルとやり直せるかな。
私は他の4人に比べて圧倒的に不利。
だって、奴隷だから。
魔道具ギルドの職員のピュアンナから、他の3人のことを聞いた。
お子様は除外して良い。
シナグルにそういう性癖はない。
長く付き合っているから分かる。
ピュアンナは強敵。
冒険者ギルドの受付嬢は、有能な冒険者と結婚したがって鎬を削る。
殲滅と一撃は普通ならなし。
男より強い女は敬遠される。
でもシナグルだとありになる。
強敵ね。
一緒にパーティを組んだりすると仲が急速に良くなったりする。
本当に強敵。
私の利点は幼馴染。
でも幼馴染は結ばれないことも多い。
良い点も分かるけど悪い点も見えてしまうから。
私はシナグルの良い点を見逃した。
マイナス要素しかない。
弱気になったら駄目。
こういう戦いは強気になった方が勝つ。
負けん気だけなら誰にも負けない。
よしっ、頑張ろう。
生きる希望がまたひとつできた。
そう思うことにする。
魔道具を直して貰って、神のコインを手に戻る。
神のコインはどこに隠そうかな。
財布のが一番良いような気もするけど、たまに奴隷同士の窃盗事件が起こる。
安全じゃないのよ。
アクセサリーになんかしたら、奴隷監督官に取り上げられるに決まっている。
武器も駄目ね。
個人所有の武器はない。
討伐が終わると武器庫に戻されて、次の討伐ではどの武器を使うか分からない。
神様、このコインを隠して下さい。
そう真剣に願った。
そうしたら、コインが手の甲にぴったりと張り付いた。
こんなの目立って仕方ない。
「マニーマイン、手をじろじろ見てどうしたんだ。怪我なら治さないと討伐の時に死ぬぞ」
バイオレッティがやってきてそう言った。
「何ってもしかしてこれが見えないの」
「何か付いているのか」
バイオレッティには神のコインが見えないらしい。
隠して下さいとは願ったけどね。
まあ、いいか。
首輪に比べたらまし。
首輪は奴隷の証。
神のコインなら、人々に卑下されることもない。
まだ、何か機能があるのかしら。
きっと危機に陥ったら、助けてくれそうな気がする。
「見えないのなら別にいいわ」
「ああ、呪いの類か」
「似たような物ね」
誤魔化しはこれで良い。
さっき、シナグルと結ばれるようにって何で願わなかったのかな。
私の馬鹿。
でも、同盟を破るような汚い真似をしたら、神がそっぽを向きそう。
汚い真似はしない。
奴隷になる時に誓った。
シナグルと頻繁に会えますようにと祈った。
神のコインは応えない。
でも勇気づけてくれる。
これがある限り無敵。
そう思わないとやってられない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます