第20章 皮むき名人
第77話 ぶきっちょ
Side:ネティブ
いい気分で商品の埃落としをしてたら、泣いている女の子がきた。
男の子と女の子の違いはあるがデジャブだな。
またかよと思う。
「ええとお嬢ちゃん。どうして泣いているのかな」
「ぐすっ、ぶきっちょが悲しいの」
「何か失敗したの?」
「芋の皮むきのお手伝いをしたら、指を切って。もういいって言われた。きっとお母さんにできない子だと思われた」
「ほんとだ、傷しているね。お母さんだって憎くてそう言ったんじゃないよ。まだ早いと思われただけさ。きっと傷が治ったらまたお手伝いさせてくれるよ」
「そう。なら、私を皮むき名人にさせて」
「困ったな」
「エイタにここのお兄さんは魔法使いだって聞いた。魔法で何でも叶えてくれるんでしょう」
エイタの奴。
客を紹介するって言っても、これはないだろ。
子供に愚痴言っても仕方ないけど。
「名前は」
「ワウンドーラ」
困ったな。
ナイフなら品数は多い。
子供が使っても良いような小振りな物もある。
しかし、ナイフは高い。
きっとお小遣いでは買えないだろう。
うーん、どうすれば。
ああ、そう言えば皮むき器があるんだった。
前に貰ってしまったままだ。
「ちょっと待って」
寮まで走り、物入れを探す。
あれっ、どこに仕舞ったかな。
ええと。
捨てたりはしないはずなんだけど。
衣装を入れた箱とかには入れないよな。
文房具の箱も見てみる。
無い、どこへ仕舞った。
ふと厨房に目をやると、壁の上の方に釘を打ってあって、そこにぶら下がってた。
そうそうこれ。
たしか名前はピーラーだったな。
皮むき器だって言われたから、ここに掛けておいたんだった。
俺は普段、料理をしないから、そのまま忘れていたよ。
急いで戻ると女の子はまだいた。
「はぁはぁ、これを使ってみる」
シナグルに直してもらった皮むき器を差し出した。
ええと試すには芋だな。
店の食堂から芋を貰ってきた。
ええとどう使うんだ。
握り方は分かる。
それで、芋を刃に当てて手前に引くんだな。
シュっという音がして芋の皮がむけた。
「凄い」
「やってみる?」
「うん」
ワウンドーラが芋をむき始めた。
子供にも使えるとは凄い品だ。
こんな商品が最高の商品なんだろうな。
「お嬢さん、その複製品を作るから、複製品ができるまで貸してあげるよ。でもちょっと貸して、職人に見せないといけないから」
「うん、夕方の食事の用意の時間にまた来る」
さあ、職人に見せるぞ。
「店長、大発明です。少しさぼります」
「お前は何を言っているんだ」
「これですよ。皮むき器。これが凄いの凄くないのって言ったら」
「貸してみろ」
店長が芋と皮むき器を受け取る。
そして皮をむき始めた。
「どうです?」
「どこの品だ。これだけで王都に家が建つぞ」
「でそれの複製を職人に作らせようかと」
「やれ、仕事を放り出して良い。許可する」
最高の商品を届けるのは難しい。
でも、これを続けていれば、きっと僕も大店の主になれるに違いない。
俺が知っている職人は銀細工ドワーフ職人の彼だな。
ドワーフの工房では相変わらず銀細工を作っていた。
鉄材とかないが、できるのか。
「今日は凄い物を持って来た。これの複製を作ってもらいたい」
「ほう、柄の部分からしてただものじゃないな。何で出来ている」
「僕にも分からない。どう、作れそう」
「柄は鉄で作っても良いだろう。刃が難しいな。鉄は昔扱ったことがあるので何とかなるが、これは腕を試されるな」
スケッチが書かれて、これでひとまず、僕の仕事は終わった。
あとはでき上がるのを待つだけだ。
夕方になる前、ワウンドーラが店にやってきた。
「この皮むき器はこの国にひとつしかないと思う。くれぐれも大事に扱って」
「うん。分かった」
「この皮むき器の貸し出しの代金は不思議な物だ。お兄さんはそれを集めている」
「不思議な物ね。分かった。持って来る」
そして、ワウンドーラが持ってきた物は、鉄の棒みたいな物だった。
なんに使うんだこれ。
「どこが不思議なんだ?」
「少し軽い」
「だな」
「削ると燃える」
金属が燃えるのか。
ナイフで試しに削ってみたら盛大に火花が出た。
これ凄い物じゃないのか。
火打石より便利だ。
原理は何となく分かった。
ヤスリ同士を打ち付けると火花が出る。
これもきっと同じような感じなのだろう。
「これをくれるのか?」
「あげない、見せただけ。あげるのはこれ」
次に出されたのは、小さい歯車みたいな物が付いた道具だった。
鉄でできている。
「これが何か?」
「歯車を回すと火花が出るの」
やってみた。
シュっという音がして、火花が少し出た。
こんな小さな火花では火は点かない。
でも形は見たことがない。
シンプルな作りだから、複製は作れそうだけど、
たしかに発明的には不思議な物だ。
見たことがないからね。
シナグルは気に入るだろうか。
あそこには魔道具が欲しくないと行けない。
なんの魔道具が欲しいか考えよう。
最高の商品を届けるのは難しいのは前に考えた通りだ。
でも、この不思議な火打ち道具は商品の種だ。
シナグルなら完成形にしてくれるはず。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます