第17話 調子が抜群に良い

Side:マニーマイン

 モールスという方から魔道具が届くようになった。

 私達のパーティに目をつけるなんてなかなかやるじゃない。

 送られてくるものは9割方攻撃用魔道具。

 1割は生水とか火点けとかの生活用魔道具。


「よし、集中砲火だ」


 私達は攻撃用魔道具をオーガに向けた。

 そして、一斉に火球を発射。

 オーガの顔面に火球は当たった。


「ガァァァァ」


 オーガが顔を押さえる。


「もう一度集中砲火だ」


 もう一度一斉に火球を発射した。


「くそっ、核石がおしゃかになった」


 そう言ってバイオレッティが攻撃用魔道具を放り捨てた。

 そして新しい攻撃用魔道具を構える。


「もう一度集中砲火だ」


 再度一斉に火球を発射した。

 完全にオーガの目は潰した。


 今よ。


「【俊足】からの【斬撃】止めは【火炎剣】」

「俺もやるぜ【身体強化】【鋭刃】」

「うらぁ【盾撃】」

「【火炎魔法】、火炎竜巻」

「【回復】、疲労回復。みんなもう一息」


 Aランクのオーガは強敵だった。

 でも最初に目を潰せたのが功を奏した。

 最近の私達のお決まりの攻撃ね。

 攻撃用魔道具で目潰ししてからタコ殴り。

 楽勝よ。

 もうAランクも近い。


「じゃあ、運搬依頼の人達、オーガの死骸運搬をよろしくね」

「はい」


 いつも、運搬依頼の人達をぞろぞろ引き連れての凱旋がいつものパターンになっている。


「亜空間収納の魔道具が欲しいな」


 バイオレッティのいうことも間違いじゃない。

 それがあれば効率化が図れる。


「それはどうかな」


 盾職のサーカズムが反対意見を述べる。


「理由はなんだ?」

「準国宝級だぜ。今までの貯えが全てなくなって借金しなきゃならない」

「心配ないさ。今日のオーガの依頼料と素材でいくらいくと思う。金貨100枚は下らないぜ。準国宝って言ったって、金貨3000枚ぐらいだろ。借金しても問題ない」


「借金は怖いわね。私は連帯保証人にはならないわ」


 スノットローズも反対なのね。


「駄目だ。みんなで保証人になる。その代わり亜空間収納の魔道具の所有権はパーティメンバーに等分して持たせる」

「パーティを抜ける時はその権利が売れるってわけね。それなら保証人もいいわ」


 クールエルは賛成ね。

 私がどうでるかでパーティの意見が決まる。

 今の稼ぎなら借金は大丈夫そう。

 効率を求めるのが良いわよね。

 役立たずは嫌い。


「私は賛成よ」

「決まりだな。保証人になりたくない奴はパーティを抜けろ」


 誰も抜けるとは言わない。

 そりゃあそうよね。

 上手く回っているんだから、これが上出来でなければ何が上出来っていうくらい。


「6人様が保証人で金貨2000枚の借金ですね。魔力印を」


 印象の魔道具で印を押す。

 これには魔力の波長が登録されるから、ギルドを使う限り逃げようがない。

 これで、準国宝が手に入ったのね。


 でもまだまだ私達は上に行けるわよ。

 Sランクだって目じゃないわ。


Side:シナグル・シングルキー


 マニーマインからの伝言の返事は来ない。

 俺が冒険者でSランクになったことを報せた方がいいのかな。


 きっとマニーマイン達はBランクだろう。

 追い抜かれたらきっと憤慨する。

 黙っていた方がいいかも。

 会う機会があったら伝えよう。


 生水の魔道具を作る。

 竹を切って水筒の形にする。

 核石と溜石と導線を蓋に取り付けたら完成だ。


 生水の魔道具の溜石は小さい。

 大きいと水が出過ぎるからね。

 コップ1杯分の水が出れば良い。


 何回も使うから核石はすぐに駄目になる。

 もっともダンジョンで出てくる核石のほとんどは生水と火点けだ。

 核石のハズレなんて言われている。

 安いけど需要がある核石だ。

 バランスは取れていると思う。


 モールスとして魔道具を送り続けている。

 こちらにはマニーマインから頻繁に礼状が届く。

 マニーマイン達の近況も少しは知れる。


 順調に討伐しているみたいだ。

 俺のことはもう忘れ去られたのかな。

 いいや上手く行っているから、連携を崩したくないのかも。

 新しいメンバーも入ってきてないみたいだし。


「シナグルお兄ちゃま。男の子の人形ありあと」


 スイータリアが遊びにきた。

 あの安く買った人形の核石で男の子の人形を作ったのだ。


「どういたしまして」

「あの子はメアリの弟でしゅ。メリカという名前にしまちた」

「大事にしてくれれば問題ないさ」


 そう言えば、マニーマインから壊れた核石の修理が来ないんだよな。

 まさか壊れた核石を捨てているんじゃないよね。

 きっと魔道具職人に売っているに違いない


「大事にしましゅ。家族でしゅもの」


 さて、オルゴールの人形とかも良いかも。

 うん、爆発しそうだな。

 やっぱりオルゴールは宝石箱だ。


 宝石箱は作れないから買って来て魔道具にするか。

 スイータリアを連れて、宝石など装飾のない宝石箱を買う。


 そしてオルゴールの魔道具を組み込んだ。


「お手伝いしてくれたお駄賃に魔道具の宝石箱をひとつあげるよ」

「ありあとでしゅ」

「壊れたら、俺の所に持って来い。直してやるから」

「あい」


 スイータリアなら大事に使ってくれるだろう。

 リボンでラッピングしてソルとマギナとピュアンナへ宝石箱を贈った。


 別に他意はない。

 日頃の感謝の気持ちだ。


 装飾の付いてない宝石箱は安いからな。

 魔道具もかなり安い魔石を使った。

 ただみたいな物だ。

 こんなの贈り物とも呼べないけど、俺の真心がこもっている。

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