あとがき、から書くの流行ってる？

第1話 数行でわかった、これは果て無き苦行

　知人の佐又くんがライトノベルを書き始めたらしい。何でも出来栄えが不安だからまずは僕に読んでもらいたいと見せられた。

　僕が割とラノベのへビー読者だとわかったからだそうだが、彼とは友人でもないしそんな話はしていない。佐又くんのバイト先のカフェで僕はテーブルにラノベを積み上げては読んでいるだけ。苗字だって、ついさっき名札で知った程度の間柄。下の名前は知りません…。

　ん～と、僕が盗作する気満々の人間だったら？とか少しも警戒しなかったのだろうか…。

　タイトル『あとがき』。いや、冒頭にあったからタイトルだと思ったがどうやらそうじゃないらしい。書き出しで純粋にあとがきを書いているのだとわかったけど…。けどさ…。

　あとがき

　こんにちは。この度、『転生したらネクロマンサーがまさにアンデッド化しようとしていた死体でした。半生のアンデッドになってしまいましたが、スキルが【超回復】だったので聖女を目指して生きていきます。あれ？半分死んでるのだから生きていく、でいいのかしら？とか思った矢先に身体がシュウシュウいってますけど大丈夫でしょうか？そんなスローライフ始めるぞ！』で本屋大賞を受賞しました者です。

　実はまだペンネームを考えていないので仮の名前を名乗らせてもらいますね。では、改めてそれでご挨拶を。

　こんにちは、太宰治です。

（それスローじゃないじゃん？　開幕から過酷…。さて、いきなり色々とあるんだが……。これ、この調子で最後までいくとしたら最初で体力を奪われないようにペース配分した方がいいね。つっこまずにいくか）

　僕が初めて読んだライトノベルは『失楽園』です。『人間失格』も好きなのですが、『失楽園』の方から読み始めちゃいました。渡辺、、えぇと誰でしたっけ。まあ、誰でもいいわけですが誰だかわからない人には本当に感謝です。

（渡辺淳一？　そっちなの？　ジョン・ハミルトンの失楽園だったら、佐又くんならライトノベルと間違える可能性もワンチャンあると思ったんだけど……。あっ、ダメだ、ダメだ。それだけじゃないんだけど、こんなに序盤から気にしてはダメだった）

　僕が『転生したらネクロマンサー』…、えぇと、アレを書いたきっかけからお話しますかね？

（自分で認めちゃったよ、タイトル長すぎだってさぁ。特に君は渡辺淳一も忘れちゃうくらいなんだから絶対覚えられないでしょ？　で、あんたまだ何も書いてねぇし！　

　書いてもないもののきっかけなんか知らねぇよ！それにライヴ配信じゃないんだから読者に問うても返事はすぐに返らないぞ。ダメだ冒頭でごっそりと体力を削られる……）

　書き出し数行で既に苦行…。続きは明日、いや、体力の回復を待って来週読ませてもらおう。