第40話俺の知らない顔
婚約継続の旨を話せば、ディアナは「何故」と繰り返しながら泣いた。俺がディアナを不幸にしたくないように、ディアナも俺を不幸にしたくない。
「カフスボタンを覚えているか?」
ディアナの父の葬式の日に分け合った一対のカフスボタン。カフスは一つでは役に立たない。再開の約束とした品物。
「せっかく、一対に戻せるんだ。また離れ離れにさせたら不便だろ」
俺は、笑っていた。
これが、今は精一杯の俺の理由だった。
ディアナはきょとんという顔をしていたが、やがて木漏れ日のような優しい笑顔を見せる。束の間ではあったが、そこには憂いがなかった。
不幸の運命に囚われていない真のディアナの姿は、前世の俺が知らない表情をしていた。
俺を殺す予定のハズレヒロインが許嫁(男)なんだが、どうしろと 落花生 @rakkasei
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