第9話 住宅の内見が地球を守ったって?

「話をまとめると、あの異星人……レーザ星系の青系ギリアードは人間の寿命を吸い取って金持ちに売りさばく商売をしていました。顧客は地球だけでなく銀河の広範囲に点在していたようです。尚、今回発見した時間調節型の施設は山口だけで他にはありませんでした。今までは誘拐して拉致し寿命を採取して放置するという方法……いわゆるアブダクションを繰り返していたようです。採取する寿命はどれも数年分と控えめで、社会問題化するのを避けていたようです。問題を起こさず寿命を採取するためあの施設を制作したものと思われますが、維持コストが極めて高く複数個所への設置は見送られたとの事。日本における彼らの拠点は全て潰しましたが、他国においての実体は掴めておりません」

「はい」

「地球付近に接近していた母船は宇宙戦艦形態の長門が急襲し拿捕しました。アルマ星間連合への引き渡しは済んでおります。また、あの施設で囚われていた人員は全て回復し社会復帰しております。ただし……」

「ただし?」

「売れないSF作家の黒田徹先生は極めて旺盛な執筆意欲を持たれ、現在新作の設定とプロットの執筆をされているのですが?」

「が?」

「タイトルは『萩市立地球防衛軍』との事です。只今、この企画を通さないようにと複数の出版社に圧力をかけております」

「うーん……私が検閲するのはどうかしら?」

「姉さまが?」

「そう。防衛軍のネタで小説を書くなら、総司令の許可は取らないとね」

「はい。その通りです」

「それで、登場人物の設定とか、私が作っちゃう」

「え? 姉さまがですか?」

「そうよ。うーん。魔法少女モノにしたいわね。もちろん、魔法少女のリーダーはララさんで」

「姉さまではなく私がですか?」

「そう。ララさんが主役。しかも魔法少女」

「似合わないと思いますが」

「あら。初代プリキュアのキュアブラックなんてララさんそのまんまじゃないの。何でもかんでもぶん殴るし」

「知りません」

「それでね。私はもちろん、敵側のセクシー女王様にします」

「え? セクシー女王様ですか?」

「そうよ。立ち位置としてはドロンジョ様とドクロベエ様を兼任。部下が失敗した時にお仕置きするのが私の役目よ」

「ああ。姉さまの趣味そのものですね」

「タイトルは『地球を守る魔法少女隊……ウィッチ・ガーディアンズ』にします」

「決定ですか?」

「もちろん決定です。ところでララさん。後ろにいる小さい子は?」

「ああ、彼等は例の施設で働かされていたネズミ獣人です。最上に親切にされ彼女に懐いてしまいました。それで本国には帰らず、最上のお手伝いをしたいと」

「わかりました。貴方たちは入隊希望ですか?」


 ララの後ろに控えていたネズミ獣人の三名が一歩前に出た。


「はい。私はアンジェリカです」

「僕はシャルル」

「僕はエドワードです」

「私たちは最上姉さまのお手伝いをしたい。だから、防衛軍に志願します」

「わかりました。貴方たち、やりたい仕事はありますか? 戦闘機のパイロット? 戦車の砲手?」

「いいえ。僕たちは整備員として最上姉さまのメンテナンスをしてあげたいです」

「整備員ですか。地味な仕事ですがやっていただけますか?」

「もちろんです」

「光栄です」

「命を懸けて最上姉さまを守って見せます」

「ありがとう」


 ミサキ総司令と三人のネズミ獣人はがっちりと握手を交わした。新たにアンジェリカ、シャルル、エドワードの三名が整備員として防衛軍に加わったのだ。


 尚、件の住宅はSF作家の黒田徹が住む事となり、正蔵の一人暮らしの夢は潰えた。住宅の内見という一見して地球防衛とは関係の無い行動が、地球を守ったのだ。


【おしまい】

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萩市立地球防衛軍☆KAC2024その②【住宅の内見編】 暗黒星雲 @darknebula

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