空振りのツケ
待ち合わせをすっぽかされて二日が経った。
あの日、ルアンナは約束の時間から二時間ほど待ってみたが、結局犯人らしき人物は現れなかった。
以来、今日まで何もない。
キョウジも夜中までデイブのパブで怪しい者が来ないか見張ってくれているけど、ここ二日間、怪しい者は来ていないらしい。
何もないということも気になるが、ルアンナはひとつ気になっていることがある。
どうして犯人は待ち合わせ場所に来なかったんだろう――。
犯人から届いた返信には、是非会いたい――と書かれていた。時間と場所も向こうからの指定があったから、その通りに行ったのに……。
目印のハンカチはちゃんと巻いていたし、目に付かないはずがない。
もし、待ち合わせ場所に来てたんだったら何で姿を見せなかったんだろう。
「……」
いろいろ考えてみたけどわからない。
もしかするとあの人探し広告を出したのは犯人じゃなかったのかな……そんなことを考えてると、キョウジがやってきた。
「明日、カンタベリーに行ってきます」
キョウジは出し抜けにそんなことを言った。
「カンタベリー?」
キョウジは査問会に呼ばれてましてと頭を掻いた。
ルアンナは知らなかったが、カンタベリーには国教会の総本山である大聖堂があるのだそうだ。そこで今回起きている一連の事件について状況を説明するよう呼び出されたらしい。
「報告やら
「そうなんだ」
「僕がいない間なんですが、メイヤーさんのところで待っててくれませんか」
「え? なんで?」
「万が一犯人が襲ってきたら大変ですから」
心配してくれるのはありがたいけど、どうも犯人という部分がイメージできない。
「あのさぁ、ホントに来るの、犯人?」
「どういうことですか」
「だって、待ち合わせにも来なかったし、昨日も一昨日も何にもなかったじゃん。新聞の人探しってのも無関係じゃないの?」
キョウジは、犯人に間違いないと思いますが――と言ったところで言葉を切ると、それを証明しろと言われると難しいですねと表情を曇らせた。
「あたしこの部屋にいちゃダメかな?」
メイヤーと話すのは楽しいが遊んでばかりもいられない。仕事に出なければならないのだ。最近サボっていたツケが回ってきて懐もめっきり寂しくなってきている。
キョウジはしばらく考え込んでいたが、やがてわかりましたと顔を上げた。
「日中は人の目もあるし仕掛けてはこないと思いますが、夜は注意してください。部屋の鍵も忘れずに掛けておいてくださいね」
「はいはい」
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