I reach out to the stars and get them ~僕は夢を掴む~

kanegon

There are few stars.But this place is bright.

 引っ越し先を決めるために、僕はどんな感じなのか実地を見てみることにした。いわゆる住宅の内見である。


 この物件は良さそうだ。とにかく気軽に使いやすい。運営は大手で安心。イベントも多数で、他の入居者と明るく楽しく交流することができる、というのが最大の売りであるようだ。


 以前の所は入居者同士の関係がギスギスしていたので、雰囲気が明るいことが僕の最も求める条件である。


 イベントというのが、具体的にどんなことをやるのかが気になる。


 冬に開催されるカクヨムコンが最大のコンテストだそうだ。そこから多数の人気作品が生まれている。カクヨムコン参加者から芥川賞作家も輩出しているらしい。


 でも恥ずかしながら、僕は10万字の長編を書ける実力が無い。800字の掌編を書くのがやっとだ。ただし、くだらないダジャレオチなら得意だ。


 そういう人にも向いているイベントがあるようだ。春に開催されるKACは、800字の掌編でも参加できるという。


 これこそが僕が求めていたものだ。以前に常駐していた裸○ンという小説投稿サイトはサービス終了してしまったので、活動拠点を移さなければならない。


 僕は胸を高まらせながら、カクヨムの新規登録を始めた。ここでは、どんなまだ見ぬ小説と出会うことができるだろうか。どんな人が僕の書いた珠玉の小説を読んでくれるだろうか。


★★★


 僕は夜空を見上げて溜息をついた。


 引っ越してきたカクヨムは事前に聞いていた通りの場所だった。


 気軽に使いやすい。運営は出版大手のKADOKAWAだ。イベントも多いし、明るく楽しく他のユーザーと交流できる。


 だけど、明るいということは、星が見えにくいということだ。


 カクヨムは、星の少なさに一喜一憂する場所だった。


 そういえば、芥川賞の人も、カクヨムコンでは一度も読者選考を通過できなかったそうだ。きっと、星の少ない夜空を見上げながら、今の僕と同じ言葉を呟いていたんだろう。


「ああ、★がほしぃ……」

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