【KAC20242】心の部屋

きんくま

心の部屋

少女は世界から忌み嫌われていた。


産まれが人と違うから?

彼女は何もしていない、ただ産まれただけ。

それでも周りは許さなかった。


彼女は逃げた。

そして倒れた。


気づけは知らない天井、行き倒れたところを救われたのだ。

そこからは幸せだった。

しかし、それも長く続かなかった。



いつからか少女は人の内面が視えるようになった。

辛い生い立ちの彼女は安らげる部屋が欲しかった。

そして理想の人を探し始めた。


この人はどうだろう?


――広い部屋。

シンプルに家具が並び、整然とした綺麗な部屋。

きっとこの人は良い人だ。

そう思った、そして奥の扉を開ける。

そこはボロボロの壁にべっとりとついた血。

刃物で彫り込んだような誰かへの呪詛。


あ、ダメだ。

この人は表面だけが綺麗なんだ…



次の人はどうだろう?


――薄暗い部屋。

入ってすぐに後悔した。

壊れた人形が散乱している。

大人、子供、年齢はバラバラ。

共通しているのは女性を象った人形であること。

衣服は着ていない。


ダメだ…。

この人の欲望は歪んいる。



次の人も、次の人も、ダメ、ダメ、ダメ。

納得のできる部屋を持った心の持ち主はいない。


表で心配し、裏で笑う、

表で優しくし、裏で汚す、

そんなのばかりだ。


少女は諦めた。

きっと私が安らげる場所はない、そう思ったことだろう。


彼女は完璧を望み過ぎたのかもしれない。

人は大なり小なり、歪みや汚れを持っている。

それを理解するには少女は幼過ぎた。


絶望した少女は心を殺し眠りについた。



長い長い時間を過ごすことになった彼女が心惹かれる部屋に出会うのはずっとずっと先の話。


暖かな真っ白な部屋に大切に大切に並べられた写真。

人との繋がりが大好きだと分かる。

しかし、照明は慎ましく、どこか自信がないことが窺える。

好きだけど怖い、反発しそうな感情が視える部屋は成長した元少女の心を生き返らせた。


白い髪に伏し目がちの銀の瞳、外見の通りの心の持ち主に彼女は執着した。


「必ずこの子を手に入れるワぁ…」

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【KAC20242】心の部屋 きんくま @kinkuma03

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