不思議な人気物件へようこそ!
カエデネコ
不思議なお家
この家に住む住人は内見会をするたびにどんどん増えていく。まるで吸い寄せられるようにお客さんは寄ってくる。
「こんにちは!お家を見せてくれる?」
いらっしゃい!どうぞ。
「わあ!素敵。私が住めるような空いてる部屋はあるのかしら?」
ありますよ。どの部屋が良いか見ますか?お気に召すといいのですが。
「もちろんよ!あら……このたくさんの窓がある部屋、良いわね。この部屋にするわ。姫の命令!」
え!あなたはお姫様だったんですか。それは存ぜず、失礼しました。どうぞおはいりください。
次の人が見せてくれる?とやって来た。
やはり人気物件。実は今日だけではない。昨日も相当、集まってきた。大きな家だから困らないが……。
「このお家、楽しそう!いくらで借りれるの?」
えーと、3万円くらいからですかね。
「ちょっとお高いわねぇ。でも良いわ。わたくし、王女ですもの」
王女様!?この家には高貴な方々が来るんですねぇ。なぜなのでしょう?
次にやって来た人はニヤニヤ笑いながら、家を見に来た。
「こんにちは。この家をまるごと買いたいんだけど?」
まるごとですか!?そう言うとは思わなかった!すると先に入居していた人たちが意義を唱えだす。
「何言ってんのよー!ここはわたしたちの家なのよ!」
「そうよ!そんなの許しませんわ!王女に逆らうつもり!?」
言われた相手は一瞬怯んだ。だけど負けじと言い返す。
「一番偉い王様だぞ!この家を見せてもらったら気に入ってしまった!どいてもらおうか!」
なんと!王様だったらしい!王様まで現れるなんて!この家はどうなってる!?
もちろん、それで先住人達が納得するわけがなかった。先住人達は権力に屈しない。えー!ずるいわよ!ダメよ!と非難の声があげる。カオスになってきたなぁと思った時だった。
「かおりちゃん!ちなちゃん!お家の人がお迎えよー!」
王女様と姫の二人がハァーイと返事をして駆けていく。人形がポイッと呆気なく、かごに片付けられた。
取り残されたのは王様一人。ポツンと突然寂しげになる。ニヤニヤ笑いも消えた。
「かけるくん、どうする?」
途端にドールハウスの遊びは面白くなくなったらしい。僕ももういいや……と一人でドールハウスの部屋の中の小さな椅子や机のなどを片付けだした時、かけるくんのママが来た。パッと明るい笑顔になって、先生、さよなら!バイバーイ!と手を振る。
王女も姫も王様もそれぞれの家に帰っていった。それぞれの温かい家へ。
「オキノ先生のドールハウス人気ね」
他の先生から声をかけられる。
「私が小さい頃、ほしくてねだって買ってもらったのに、今じゃ全然使っていなかったので、もったいないなぁと思ったんです。子どもたちが喜んでくれて良かった」
「椅子や机、ベットに本棚、茶碗、カップに明かりも灯せるのね……精巧に出来てるわよねぇ。見てるとドールハウス欲しくなっちゃう!子どもたちの気持ちもわかるわぁ〜」
え!?あなたもですか!?同僚の先生が小さい椅子を手のひらにのせて眺めている。
「私、子どもたちに遊んで欲しくて持ってきたんですよ」
「ふふふ。わかってるわ。可愛くて大人も欲しくなっちゃうわね」
そう笑って、ドールハウスの中を綺麗に並べて片付けてくれた。
私も買ってもらったときは1日中眺めていた。人形達の住み家にして遊んだあの頃を思い出す。
さて本日の人気物件内見会はこれでおしまい。
また明日、きっと賑やかなお客さんたちが来るだろう。
不思議な人気物件へようこそ! カエデネコ @nekokaede
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