とある不動産屋の内見に行ってみたら…

黒羽冥

第1話え?そんな事が!?

俺は今アパートを借りる為の内見に来ている。

今日は朝早くから起こされた事もあり欠伸を堪えていると。


「ちょっと!?聞いてる!?」

「お、おお…きいてるよ。」


俺が返事をした相手は交際相手の『のぞみ

数年の交際を経てこの度結婚する。

その為の新居を借りに内見に行こうと言う話になったのだ。

俺はゆっくりと起き出すと身支度を始める。

今日はせっかくの休み…だけどこれは仕方ない事だ。

そう自分に言い聞かせ、街へと出る。

そして、俺達は不動産屋に辿り着く。

すると店には一人の男がデスクに向かい何かをしていたんだ。


「こんにちは!今大丈夫ですか?」


彼女がそう声をかける。

男はこちらに気がつくと口を開く。


「おお!?久しぶりのお客さんか…いらっしゃい!そちらへどうぞ。」


男はそう話すと俺達をソファーへと誘導する。


「久しぶりの客って…ここ…大丈夫か?」

「しっ!今は余計な事は言わない!」


俺がつい声に出すと彼女に止められる。

彼は俺達にお茶を薦めると、目の前にようやく座る。

そして、どう言った訳かニコニコとこちらを見ている。


「あの……」


俺はそう声をかける。


「ああ!本日はようこそ…この『未来が見える不動産』へ。」

「「えっ!?」」


俺達は不可思議な名前に思わず驚き声を上げる。

すると男は笑みを浮かべながら話す。


「ふふん!実は…僕の営んでいるこの不動産屋なのですが…人によっては凄く喜ばれるのですが…はたまた他の人間にとっては不幸にも怒って帰られる方もいる…そんな部屋を紹介する不動産屋なのです。」

「それって…」

「どういう事ですか?」


男は相変わらず笑みを浮かべたまま続ける。


「人間には風水も関係するのかもしれませんが家も…はたまた部屋も…その人間にとって最善な住居に当たると言う訳ではございません。実は我が不動産屋で紹介する時…内見していただくのですが…何故かその際…扉を開けると…部屋で起こる未来がお客様に見えてしまうというおかしな事がおきてしまうのです…どうです?それでも内見をして…部屋を見て回ります??」


男はそう俺達に問いかけてくる。

当然…俺はそんな未来なんて関係ないと思ってしまう。

俺達が、俺達二人なら…何が起こっても…きっと乗り越えていけるさ!

すると、彼女が口を開く。


「み…てみたい…です。」

「え?」


俺は彼女のその声に驚いてしまう。


「いいのですか?どんな未来が見えたとしても…。」


男のその言葉に俺はこの時…ドキドキ感が止まらない。


「はい!」


彼女はそう告げた。

そして俺達は。

「ふぅ……うーん……こんな事言わないで貸すだけ貸せばいいのだろうか。」


男はため息混じりにそう呟く。

結局彼らは…自分達の未来を見て。

数件回ったが…どこもきっと同じ未来が見えたのだろう。

五件目を回った後。

二人共…無言で帰ってしまわれたのだ。

「はぁ…またお客様…こないかなぁ。」

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とある不動産屋の内見に行ってみたら… 黒羽冥 @kuroha-mei

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