それは、人に憑くのか?家に憑くのか?

蘇 陶華

第1話 僕に憑く霊が、住宅の内見で怒り出した訳

音羽は、僕と話す事を拒否していた。僕と山奥で、出会ってから、ずっと一緒にいたのに、何を怒り出したのか?僕と話す事を拒否している。

「いい加減しないか?」

僕は、痺れを切らして、声を掛けた。

「話てくれなきゃ、わからないじゃないか」

音羽は、性別不明の幽霊である。僕は、幼い頃、霊障がありすぎて、

心配した祖父が、知り合いのお寺に僕を放り込んだ。そこは、とても恐ろしい寺だった。僕は、死ぬような恐怖を味わったが、その背後に居たのが、この音羽。僕に取り憑いている幽霊である。見た目は、可愛い女の子にも見える。が、少年の様でもある。昔、東北を大飢饉が襲った時代がある。その時に、花魁に売られた女の子の霊だと言う僧侶が居た。その子は、病気になり、最後は、餓死したのか、病死したのか、わからない状態だったと言う。その霊が、音羽だとの話もあるし、雪山で、遭難した霊だとか、幾つかの動物の霊が集まった者だとか、勝手な噂がある。だけど、事実は、僕に取り憑いていて。いや・・・取り憑いていて、と言うより、僕が、助けてもらっている?状態?音羽は、いつも、僕の頭の上に浮いている。

「話したくないのか?」

音羽は、逆さまに浮いたままで、僕を睨みつけている。怒り出したのは、僕が、現在、住んでいる家から、引っ越そうと、あちこち物件を回って歩き始めた昨日からだ。音羽がいるから、あまり、条件のいい所は居心地が悪いらしい。僕は、音羽が好みそうな陰気で、何かが住み着いていそうな事故物件を回ってみていた。住宅の内見だ。一軒家でも変わらない。僕は、他の人の様に、オーブを見る事はないが、霊実体を見り事ができる。僕が住宅の内見で選んだのは、途切れない踏切のそばにある古い家屋だった。そこには、害のない女性の幽霊が、住んでいた。住んでいたと言ったら、語弊があるが、彼女は、家に取り憑いている訳でもなく、人に取り憑いている訳でもなく、ただ、どうしたらいいのか、迷っている間に、時間だけが、流れている様だった。女性は、自分が、何故、そこにいるのか、わかっていなかった。

「・・で。どうして、怒っているのかよ」

あまりにも、ツンツンしているので、僕は、爆発した。側から見たら、頭のおかしな高校生が、一人で、騒いでいるようにしか見えないだろう。

「迷っているだけだと思うのか?気を抜けば、お前は、取り憑かれるかもしれないんだぞ」

音羽の、口が耳まで裂けていた。

「油断するなと言った。お前が、油断したから、私は、お前に取り込まれてしまったのだぞ」

音羽の言いたい事は、十年以上も前の話になるから、割愛するが、そこにいる例は、迷っているだけではなく、住宅の内見に来た客に取り憑こうと待っていたそうだ。それなのに、女性の姿に、ホイホイ喜んで行く、僕の姿に腹が立ったらしい。と言う事は、音羽は、女の子?

「何だよ」

顔を見ると、裂けた口から長い舌が飛び出てきそうで、怖い。


それを他人は、BLと言う。邪神は少年を愛すに続く。

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それは、人に憑くのか?家に憑くのか? 蘇 陶華 @sotouka

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