家を探すポイントは日当たり、カラス、飯だ。

第1話 住宅の内見

　住む家を探す。

　それは大変重要なイベントだ。

　なんせ一生を過ごす場所を決めるんだ。自分がこだわるポイントは出来る限り押さえておきたい。

　まず初めに、日当たりってのは重要だと思うんだ。何で重要かって？　ぽかぽかした場所でのうたた寝なんてどうだ。最高じゃあないか。ふむ……今見ている家は随分と日当たりが良さそうだ。大きな掃き出し窓からの太陽を浴びながら、クッションでも敷いてね……おっと、簡単に決めちゃあいけないな。後で別の家を見た時に「あぁ、こっちにすれば良かったなぁ」なんて思っちまったらそりゃあ凹むだろう？　いくつか家を見て、納得できる家を選ぶってのが重要なんだ。

　それに押さえておきたい重要なポイントは日当たりだけじゃねぇ。例えば、だ。周辺環境ってのも重要じゃねぇかな？　危険の多い場所に家があるってのは避けたい。誰だってそうだろう。例えば、一歩家から出れば目の前にはビュンビュンと車が物凄いスピードで飛び交ってたらどうだ？　そんなもん、命が幾つあっても足りやしねぇよ。だから周辺環境を確認するのも大事なんだ。ほら、こうして次の場所に向かう時の道のりもちゃあんと見て……おっと。……なんだかカラスが多くないだろうか。うぅむ……見上げりゃ電線の上で何羽もカァカァ鳴いているな。おや、向こうのマンションのごみ捨て場を見ろよ。ゴミ袋を散々ズタズタにして遊んでるカラスが何羽もいるじゃねぇか。……辞めだ辞め。ここは危険だ。別の場所に行こう。

　あと住まいでとびきり重要なのが飯だ飯！

　空腹ってのはきついもんだぜ。うめぇ飯を毎日食えるってのは毎日が満たされるってことだ。次の家は、おお！　綺麗で大きなキッチンだ。どんな料理だって作れそうだぞ。うん？

　窓がガラリと開いて女が顔を出して俺を見た。

「あら、かわいい猫ちゃん！　うちでご飯食べる？」

　窓からうまそうな飯の匂いが漂ってくる。

　……そうだな、ここに決めるか。

　俺は窓から家に飛び込んだ。