四国ジュエルパレス内見会(月光カレンと聖マリオ23)

せとかぜ染鞠

四国ジュエルパレス内見会

 テーマパークでのバッファロー暴走の危機が回避されたあと,動物触れあい広場のテント陰ではパーク所有者のIT企業社長 魔導まどう招鬼まねきが声を荒げていた。

「サファリワールドのフィールド内だけをバッファローが駆けまわるって演出だったじゃねぇか! まるで話が違う! 客を危ねぇ目に遭わせたし,施設だって何もかも滅茶苦茶だ! 全く大損害だよ!」

「バッファローたちは何れも厳しい検査をパスした精鋭揃いです。共鳴薬の服用に問題があったのでは?」瞳の青い西洋人が訛りのある言葉で問う。「8ミリリットルですけれども?」

「きっちり,はかって飲んだよ! だのにバッファローどもは俺の意思とはまるで違う動きをした!」

「本当はお望みどおりになって御満悦なんだろ」アフロヘアの黒人娘が腰高の身体を反らす。「テーマパークに多額の保険金をかけてるそうじゃないか。あんたは施設の破壊を望んだ。それがちゃんと伝わったから,バッファローたちはあんたの思いどおりに動いた。つまり共鳴薬もバッファローたちも正常な機能を発揮したってわけさ」

 上気して黒人娘に詰めよった魔導を周囲の男たちが制止した。

「ブラッディ,部下の教育がなってないぞ――この女も共鳴薬漬けにしたうえで調教してから使えばどうだ」魔導が男たちの腕を振りはらう。

「そう 熱く ならないでください 」ブラッディと呼ばれた西洋人が愛想笑いを浮かべる。「共鳴薬の商談は変更なく進めて構いませんね?」

 渋い表情で魔導が頷く。「今更やめれっかよ……」

「四国ジュエルパレスの内見会でまたお会いしましょう」

 魔導とブラッディとは握手を交わして別れた。

 四国ジュエルパレスというのは最近できたばかりのタワーマンションだ。そこで,いかがわしい取り引きが行われようとしている。選りによってキヨラコが特別な思いをいだく相手の手で――

 改心させてやる!

 招待状などなかった。しかし俺さまは難なく四国ジュエルパレス内見会の来賓たちに溶けこんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

四国ジュエルパレス内見会(月光カレンと聖マリオ23) せとかぜ染鞠 @55216rh32275

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ