第43泳

 どうしてマリンが二人を呼んだのか、飛尾に尋ねても分からない。それどころか、料金を払えば伝言として聞きに行ってやると言う。

「飛尾はよく働きます! 料金は、ピカピカ、たったひとつから!」

「光るものってこと?」

 リムが聞くと、うんうんとうなずいている。首も胴体も区切りなく丸々として、イモリのような小さな手を下に突っ張り、のけぞらせた頭が上下に振っているのでそれと分かる。


 結局のところ、街に戻れば伝言の理由が分かる。

 グリンとリムのケンカは平行線のまま、二人とも煮詰まっていたところだ。リムが納得しないなら、ここに置いていくことはできない。

 なぜなら、真ん丸の黒い目を光らせたこの小魚は、この大輪の花に住むよりは、冷たい海を開拓した方がマシだと言い切るのである。

 新しい住みかの候補を、いくつか聞いておくべきだったとグリンは後悔していたところだった。


「大切な従兄弟のグリンへ。可愛いリムもいっしょに、まちにもどってきて。おおいそぎで。マリン」


 また南にある街へ行くことになると、大都市リュウキューウが、そして受診がまた遠くなる。それでもマリンが呼んでいるのだから、グリンは戻るに決まっていた。それに、リムも一緒にと伝言にある。


 グリンの背中にリムがくっついた。飛尾の乱入から落ち着いても、まだ意地っ張りである。

「おれ、グリンの海藻が伸びすぎないように、ちゃんと切ってるんだぞ。グリンが困ることなんか、なんにもないんだ。おれがいないと、困るくらいなんだ」

 そう言って、グリンと一緒にいることを望んだ。

 伸びたての海藻を食べるのは、もちろんそれが最も柔らかくて美味しいからに違いないのだが、リムはそれで一人前の仕事をしたつもりでいる。


 二人が料金になるものを持っていないと知ると、飛尾はやってきたときのように、海藻を飛ぶように移動しながら去っていった。

「家族へのメッセージ、デートのお約束、おしらせはなんでも、飛尾におまかせで、ござい! それではまた! ピカピカ、たったひとつから! 飛尾におまかせで、ござい!」

 姿が見えなくなっても、大きながなり声の広告が聞こえていた。


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