第17泳

 グリンには、緑、褐色、赤の藻が生えている。蜘蛛の糸のように細いものもあれば、タコ糸ほどのものもある。それらは背中の上部に、わさわさと揺れている。

 深刻になってきたリムと相談しながら、ユキはそれぞれの色の海藻を二本ずつ選んだ。選ばれた海藻を、ごく根元の箇所から、リムが嚙み切って渡した。

 グリンはそのあいだ、自分の背中を見ることもできず、おとなしく海藻を差し出していた。


 それから二個のイモガイを、グリンが割る。指が太くて短い左手に持ち、握って割るとき、グリンは眉根を寄せて緊張する。せっかくの自然の恵みなのだから、砂のように粉々にしてはもったいない。宝石は大ぶりなものも美しいが、小粒が集合しているさまも、また見事なものだ。

「うまいぞ、グリン。キラキラがバラバラになった」

 リムはグリンの左手に近付いて、感心して言った。


 イモガイの模様がよくでている欠片は、植木鉢の砂の表面に撒いた。これだけでも、貝のツヤが光を受けて、よく輝いて人目を引くようだ。

「いいじゃん。これ、最高だよ。有名人、これは絶対に喜ぶね」

 ユキは黄金色の髪を両手で押さえて、視界の邪魔にならないようにしながら言った。


 切った海藻の根元の部分に、ちょんと接着剤をつけて、割ったイモガイの、これまた小さな欠片をくっつける。それを植木鉢の砂に浅く埋め込むと、わりとしっかりと固定できた。

「うん、まあ、うまくできたんじゃないか」

 グリンが下顎をぐっと突きだして、唸るように言った。


 固い砂の植木鉢に、イモガイが豪奢に光っている。生えた海藻は色とりどりで、その足元の輝きといったら、星を散らしたような価値を思わせる。三人が考えていたどの完成図よりも、ずっと上手い出来だ。


「有名人さん、喜んでくれるはずだよ」

 リムは相変わらず植木鉢を周回しながら、少しの海流を起こして海藻をゆらめかせた。

「おじさん、ありがとうね」

 ユキはグリンの顔をぐっと見入るようにして、礼を言った。白真珠のような歯を見せているものだから、リムはサメのそれを連想してぎょっとした。リムはサメの歯を見たことがある。歯といっても一本だけ、サンゴ礁へ流れ着いたものを、小魚仲間たちと一緒に見つけて震えたものだ。

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