第14泳
有名人への手土産を探すユキに、グリンは十個の立派なイモガイを調達した。しかし、背中の海藻とリムをまるだしにしたまま街へ入れば、悲しい事故が起きかねない。繊維質の布をユキから譲ってもらうには、イモガイの加工が必要だ。
グリンはよくよく考えながら、ゆっくりと言った。
「えっとね、植木鉢は、そこらの砂か、薄い石や割れた貝の破片なんかをくっつけて作ろうか」
「えー、接着剤が要るってこと?」
目を細くするユキに、グリンはおずおずと、小さな声である。
「それはね、僕、できるから、大丈夫」
グリンの青緑の髪は、短い縮れ毛だ。それがいくつかの太い束になっている。さらさらになびくユキの髪とはちがって、グリンの髪の束は固定されたように動かない。
「リム、今は背中でじっとしていてね」
そうリムを気遣うと、グリンはおでこの生え際に、右手の長い指を突っ込んだ。
髪束の中にやった指に、透明な液がついていた。気にしなければ分からないほどの量だが、グリンは砂をとると両手を上手い具合に動かして、手の平ひとつぶんほどの団子を作ると、平らに潰した。砂製の楕円の板ができたというわけだ。
「こういうのをね、いくつか作って繋げると、植木鉢が作れるよ」
ユキは大きくて優雅な尾をパタパタさせ、目を大きく開いた。瞳に光がよく入って、深い緑色の瞳がきらきらしている。
「すごいじゃん」
「なにがどうなってるの?」
リムは言われたとおりに、背中の藻に隠れながら小さく囁いた。
グリンはリムが接着剤に触れてはいけないと思って、隠れて動かないようにと話したというわけだ。小さな魚のエラが接着されるところなど、考えただけでおそろしい。
グリンはいくつか楕円の板を作った。繋げて植木鉢を形作り、隙間のないように埋めていく。
「え、もっとちっちゃいほうがいい」
ユキが横からそんな風に意見するのを取り入れながらできたものは、砂の小鉢だった。表面は波のないように、同じような細かさの砂でならされている。
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