第13泳
「そうか、まあ、そうだな。なにか、リムを覆えるものを手に入れるべきかもしれない。うむ。それは、そうだ」
グリンがうなりながら言った。
ユキは、イモガイを入れている茶色の繊維質の布を持ち上げて見せた。
「この布、ゆずってあげてもいいよ。イモガイの加工、やってくれるならね」
その繊維質の布は、向こう側が透けて見えないほどしっかりと編まれている。それでいて触り心地はなめらかで、触れたものを傷つけにくい。貝などを素材にしたアクセサリーを包むほか、体に纏っている者も決して珍しくはない。高価ではないし、人魚の手習いで作れるほどだが、今のグリンはもちろんそれを持っていない。
魚を食べる人魚もいる。街に入ればいろんな人魚やイソギンチャクがいるから、暴漢じみた者にリムが襲われないとも限らない。
「布、ほしいなあ」
グリンが言った。
「イモガイの加工、どんなのができる?」
ユキは交渉する者に特有の、ずるいような陽気なような、面白い色のある表情をした。
「そうだな。僕はね、おしゃれには疎いんだけれど」
グリンはよく考えたが、うまい案が見つからない。
「おれ、考えたんだけど」
リムが楽しそうに話し始めた。
「イモガイをぐるっと巻いた植木鉢にするってのは、どうかな。それで、グリンの海藻を植えよう! 美味しい海藻が目立って、きっともっと美味しそうに見えるよ!」
「それ、いいね! 海藻なんか食べないけど、綺麗かも!」
ユキとリムは、この案に元気いっぱいになった。
イモガイを飾り付けた鉢に、グリンの色とりどりの海藻を植える。海藻を観葉植物にする考えは、そう珍しくもない。「ながもの」と呼ばれる、ケルプなどの長い種類をたくさん植えたり、サンゴの胞子を集めてきて気長に育てたりする、植物好きの人魚もいるくらいだ。
グリンは心持ち見上げるような目線で、イモガイをどう植木鉢に飾り付けるかを考えていた。巻き起こった砂は、だんだんと海底におさまって、元の透明さの海が戻りつつあった。
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